遺言書の必要性は家庭の事情だけで決まるものではありません。
地域の不動産事情、家族構成、人口構造によって相続トラブルの発生パターンは明確に変わります。
【第3回】財産の“棚卸し”をしよう──遺言書に書くべきもの・書かない方がいいもの

遺言書を作成するうえで最も重要なのが、財産の内容を正確に把握することです。不動産や預貯金だけでなく、相続トラブルの原因となる「意外な財産」も棚卸しが必要です。この記事では、書くべき財産と書かない方がいいケース、注意点を具体例とともに解説します。
📚目次
- はじめに──「財産の棚卸し」が遺言書作成の要
- 書くべき財産①:不動産(土地・建物)
- 書くべき財産②:預貯金・現金
- 書くべき財産③:有価証券・保険・その他金融資産
- 書くべき財産④:形見・デジタル資産・ペットなど
- 書かない方がいいものとその理由
- おわりに──棚卸しが"家族の未来"を守る
1. はじめに──「財産の棚卸し」が遺言書作成の要

遺言書を作る前に、まずしておきたいのが自分の財産を"棚卸し"することです。
どれだけ立派な文案を作っても、実際に持っている財産の情報が曖昧では、相続手続きはスムーズに進みません。
また、相続人が知らない財産があると、「隠していたのでは?」といった疑念が生じ、家族間のトラブルに発展するリスクもあります。
棚卸しは、遺言の実効性を高めると同時に、"安心を遺す"行為でもあるのです。
2. 書くべき財産①:不動産(土地・建物)

不動産は相続財産の中でもトラブルが起きやすく、特に名義変更(相続登記)に時間と労力がかかるため、遺言書には必ず記載しておきたい項目です。
書く際のポイント:
- 所在地や地番、登記簿上の面積など正確な情報を書く
- 「土地と建物の両方がある場合」は両方記載
- 共有名義の場合は持分も記載
不動産の評価額は相続税の計算にも関係しますが、評価は時期によって変動するため、金額よりも物件の特定ができる情報を優先しましょう。
3. 書くべき財産②:預貯金・現金

預貯金は多くの方が保有している財産で、相続時に具体的な分割がしやすいため、記載しておくことで遺言の実現性が高まります。
書く際のポイント:
- 銀行名、支店名、口座番号(残高は任意)
- 金額の指定ではなく「◯◯銀行○○支店の普通預金口座を長女に相続させる」などと明記
- タンス預金や現金についても、記録と保管方法に注意
なお、定期預金やネット銀行の口座も忘れずに棚卸ししましょう。
4. 書くべき財産③:有価証券・保険・その他金融資産
株式や投資信託、生命保険といった金融商品も忘れてはならない財産です。
書く際のポイント:
- 証券会社名、銘柄、保有株数などを記載
- 生命保険は「契約者・被保険者・受取人」の情報を整理
- 投資信託、iDeCo、NISAなども対象
※保険金は「受取人指定型」の場合、遺産分割の対象外になる点にも留意が必要です。
遺言では「誰が受取人になっているか」も把握しておくと安心です。
5. 書くべき財産④:形見・デジタル資産・ペットなど

見落とされがちな財産の中に、形見や想い出の品、デジタル資産、ペットなどがあります。
具体例:
- 家族の写真や手紙、アクセサリーなどの形見
- SNSアカウント、クラウドに保存したデータ
- 仮想通貨(ビットコイン等)やその秘密鍵
- ペット(飼育の引き継ぎ)
これらは金銭的な価値だけでなく、感情面で重要な意味を持つ財産です。
遺言書に「形見分け」の一文を入れるだけでも、家族の心理的な負担を減らせます。
6. 書かない方がいいものとその理由
一方で、遺言書にあえて書かない方が良いものもあります。
① 流動的な内容
- 将来大きく変動する可能性のある金額や取引中の資産
・未確定のローンや事業の売掛金など
→変化があった場合に遺言の内容が齟齬をきたす可能性があります。
② 感情的な評価・批判
- 「○○には世話にならなかったから何も渡さない」など感情的な記述
→相続人間の対立を深めるリスクがあります。どうしても書きたい場合は別紙や付言事項としてやわらかく伝えるのが賢明です。
③ 法的効力を持たない希望
- 「できれば○○してほしい」といった曖昧な希望
→遺言書に記す場合は、明確かつ実現可能な形にする必要があります。希望を伝えたいだけであれば、エンディングノートに記載する方が適切です。
7. おわりに──棚卸しが"家族の未来"を守る
財産の棚卸しは、単なるリストアップ作業ではありません。
家族に何を遺し、どんな想いで託したいのかを整理する大切な時間です。
特に、不動産や金融資産は手続きに直接影響するため、遺言書には明確かつ正確な記載が求められます。分からない場合には、専門家に相談しましょう。

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