36:突然亡くなった結婚前の夫のNISA口座の調査
先日、ご相談で、結婚間近の男性が、婚約者にデジタル資産をあげたいと言っていたので、亡くなった男性のご両親から、その調査方法についての問い合わせがありました。
1.全員相続放棄した後の亡くなった方の財産の管理
2.「自己の財産におけるのと同一の注意」義務を免れるためにすべきこと
3.管理責任を無視して勝手に車を処分等した場合
4.相続債権者からの相続財産管理人の申し立てがある場合
5.相続財産管理人の選任申立ての手間と費用
6.相続財産管理人の選任をしなくてもいいケース(一般論で自己責任で)
7.最後に
相続人が全員相続放棄をした場合、それで終わりということはありません。民法では次のように定めています。
民法940条
「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」
つまり、善管注意義務(大切に保管しておくこと)まではしなくてもいいですが、「自己の財産におけるのと同一の注意」して保管する義務が課せられます。いったいどうすれば、この「自己の財産におけるのと同一の注意」義務を免れることができるのでしょうか。
この管理責任を免れるためには、「相続財産管理人」を裁判所に選任してもらい管理権を移行して処分等してもらう必要があります。これが終わるまでは、相続放棄をした相続人に管理責任は残ります。(車を保管しておかなければならないことになります。)
車を保管するにもコストがかかります。自宅の庭なら置いておけばいいのですが、駐車場を借りている場合などには費用が発生します。このような場合、この車を勝手に処分した場合どのようになるのでしょうか。
もし、この車を廃車にしたり売却した場合、「相続財産の処分」とみなされてしまいます。このような場合、たとえ相続放棄後であったとしても、単純承認(亡くなった方の財産も負債もすべて引き継ぐということを認めた)とみなされる可能性があります。負債が多くて相続放棄をしたのに、勝手に処分をすると負債を相続人として引き受けたものとみなされてしまうのです。せっかく相続放棄をしても、意味がなくなってしまいます。
亡くなった方に負債も多いが不動産などの財産も多い場合、相続債権者からの申し立てがあるかもしれません。しかし、今回のケースのように、亡くなった方の財産が自動車しかない場合などは、相続債権者からの申し立ては、あまり期待できないでしょう。
相続財産管理人に選任されるのは、「弁護士」「司法書士」といった専門家が就任することが多いです。一定期間、法定の手続きに沿って働いてもらう費用として、選任申立ての際には、裁判所に「予納金」を支払うことになります。その金額は、「数十万円から百万円以上」かかる場合もあります。これを相続人の方で負担するのは、少ししんどいですよね。ご相談される方にも、「借金が多いから相続放棄したのに、車の管理義務を逃れるために数十万円も支払うのはどうしたものか。」というご質問がありますが、法律上は「相続財産管理人の選任」は必要なのです。
このケースについてご説明する前に、原則は「相続財産管理人の選任申立て」が原則であることと、実際にする場合には「自己責任」になりますのでご了承ください。
①車にローンがある場合でディーラーローンを組んでいるケース
ディーラーローンの場合、車検証を確認していただくとディーラー名義になっている場合があります。この場合には、所有者はあくまで「ディーラー」になりますので、ディーラーに車を引き取ってもらえばいいと思います。
➁車に金融機関のマイカーローンがある場合
この場合は、所有者は「亡くなった方」ですので「相続財産管理人の選任申立て」が必要になります。
③車にローンがなく、財産的価値がない場合
財産的価値がない車とは、査定額がゼロや、新車購入した場合でも5年以上経過した車は一般的に財産的価値がないと考えられます。(昨今の半導体不足で値段が上昇しているので査定をしてもらうことが大事)こういった車は財産価値がないので廃車等処分しても財産の処分にはならないという見解が有力です。ただし、有力であるので実際に認められるかどうかはわかりません。
注意点として、自動車税を滞納している場合では廃車処分ができないので、「相続人のポケットマネーから滞納している税金を支払う」ことが重要です。相続財産から出してしまうと相続財産の処分をしたとして単純承認したとみなされてしまうからです。
④車にローンがなく、財産的価値がある場合
当然、財産的価値があるので勝手に廃車等処分した場合、財産の処分に当たるので単純承認のリスクがあります。
保管しておくだけでコストがかかりますし、車の場合、放置していても財産的価値は下がりますので、「管理責任義務違反」になるかもしれません。また、売却換価して金銭として保管しておく方法もあります。この場合も、何社か査定をとり、「売却の必要性や売却価格の妥当性など資料を用意して債権者に説明できるようにしておくこと」が大事です。
予納金は必要ですが、単純承認とみなされるリスクを避けるためにも「相続財産管理人の選任」をした方がいいでしょう。
先日、ご相談で、結婚間近の男性が、婚約者にデジタル資産をあげたいと言っていたので、亡くなった男性のご両親から、その調査方法についての問い合わせがありました。
相談者の方から相続登記のご依頼があり、被相続人の不動産を特定するために「固定資産材評価証明書」の取得をお願いいたしました。被相続人は、生前離婚歴があり、離婚の際、財産分与を受けていました。しかし、ずいぶん前に亡くなっており、登記簿上の名義人の住所と、被相続人の最後の住所地が同じでしたので、住民票の除票の写しもしくは戸籍の附票の取得をお願いいたしました。
生前贈与のために相談に来られた方で、登記簿を確認すると「平成の大合併」で、地番の変更はありませんが、平成18年に○〇郡から○〇市に編入されていましたが、登記簿を確認すると平成18年以前に、相続登記がされていて、そのために旧住所で登記がされている状態でした。
先日の相談で、遺言書に「特別受益の持ち戻し免除」の条項を入れると、遺留分対策になるのかという質問を受けました。