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負動産の処分に関する手続きについて

最近の相続案件で、見たこともない不動産の相続の名義変更をご依頼される方がいます。できる限り、市町村役場の「空き家バンク」などへの登録を促しています。仮に、引受先が見つかったとしても、相続登記(名義の変更)は必要になってきます。長年放置しますと権利関係が複雑になり、中には不在者となってしまっているケースもあります。そのような時、どのような手続きで処分までの手続きを行うのかを解説しております。

目次

1.負動産とは

2.負動産の買手が見つかったが、相続登記は必要なのか?

3.共有所有の場合の共有者の所在把握と不在者がある場合

4.不在者財産管理人制度とは

5.負動産の負のスパイラルに陥らないために


1.負動産とは

 「負動産」という用語は、通常は不動産の所有者が負担する費用が所有者にとって負担になるため、その不動産が実質的に負債のように見なされる状態を指します。

 例えば、土地や建物の所有者が、税金、修繕費、保険料、管理費などの負担を支払うことができなくなり、これらの支払いが積み重なって借金を抱えるようになった場合、その不動産は「負動産」と呼ばれることがあります。

 負動産は、所有者にとって重荷となり、売却や賃貸などの取引が難しくなる場合があります。また、負動産を手放す場合には、債権者や税務署などへの支払いを優先して行う必要があるため、売却価格が低くなることがあります。

2.負動産の買手が見つかったが、相続登記は必要なのか?

 負動産を処分するためには越えなければならないハードルが多くあります。

 例えば、「原野商法」で取得した土地などは、境界が不明確な場合も多く、土地の売却価格よりも測量費等がかかるケースも多いです。また、バブル期に販売されたリゾートマンションなどは、資産価値が大幅に下落していて、資産価値より維持・管理費の負担が大きくなり、売却が1円でも処分が難しいケースもあります。

 加えて、負動産は所有名義を取得することについて積極的でないものも多く存在します。そのため、何代にもわたって遺産分割も相続登記もなされず、結果、現在の所有者と登記簿上の名義人が異なるケースも多く存在しています。

 この負動産を処分することを前提とすると、所有者とその相続関係を明確にし、共有者が誰であるのか、その持分は何分の何か、共有者の所在はどこなのかを把握する必要があります。その後、現在の所有者を明らかにできただけでは売買はできません。なぜなら、契約を締結するのは、現在の所有者である方となるためです。そのため相続登記は必要になります。仮にそのまま放置をしたとしても、相続登記が義務化される2024年4月1日から3年以内に相続をすることが必要となってきます。

 また、過去に買った方が所有権移転登記をしておらず、前のオーナーのままの名義だった場合、所有権移転登記を行う場合には、全オーナーの相続人全員が相手になります。この場合には、相続登記は発生しませんが、所有権移転登記手続きをするためには、前オーナーの相続人を割り出し、協力を得て相続人全員との手続きとなります。相当の労力を要することになります。

3.共有所有の場合の共有者の所在把握と不在者がある場合

 負動産について、すでにいくつも相続が発生し、共有状態となっている場合、相続人全員が把握できており、遺産分割協議を経て相続人のうち1名に名義をさせることができれば、その方と買主の間で契約をすることにより、売買での所有権移転登記が可能となります。

 しかし、その共有者に不在者がいた場合、手続きは複雑になってきます。

 遺産分割協議をするにも相続人全員でできませんし、共有状態で売買するにしても共有者全員と契約となるため契約も締結することはできません。

 このような場合には、「不在者財産管理人制度」を使うことになります。

4.不在者財産管理人制度とは

 {不在者}とは、従来の十y訴・居所を離れて、容易に帰る見込みのない人のこと言うとされています。不在者が生死不明であっても、死亡したとされない限り、日本の法律では生存しているものと取り扱われます。

 このように、不在者の財産を管理するため、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、不在者の財産の管理について必要な処分を命じることができます。(民法25条第1項)

 そして、選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理保全するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割や不動産の売却等を行っていくことになります。

 家庭裁判所に申し立てができる「利害関係人」とは、例えば推定相続人(配偶者、子、父母、兄弟姉妹など)、親族、不在者の債権者、保証人、財産管理人、受遺者などが挙げられます。申立先の家庭裁判所は、不在者の従来の住所地又は居所の家庭裁判所を管轄する家庭裁判所となります。

5.負動産の負のスパイラルに陥らないために

 今回は、負動産の処分について、相続登記をしていなかった場合に必要な手続きの内容を解説してきましたが、すでにこのような状態になっている場合には複雑な手続きを要することとなるのですが、相続が発生する都度に「遺産分割協議書」を取りまとめておくとか、被相続人の方が、処分が困難と判断した段階で「遺言書」で相続人の代表者を指定し処分を生前にお願いしておくことが必要です。

 相続の相談を受けていて思うところは、早めの対策で何とかなっていたのに、放置をしたばかりに残された家族に多大な負担をかけてしまうことを知っていただきたいという点です。以前のコラムにも書きましたが、体の傷なんかは時間が解決してくれますが、こと相続となると時間の経過は悪化しか生みません。

 アイリスでは、このような状態に陥った方からのご相談を受け解決に向けた手続きを多数ご提案してきました。ぜひ、初回無料相談をご活用いただき、対策をしていただきたいと思います。

解決事例

先日、相続登記のご依頼で不動産の調査をしていたところ、土地・建物共に今回亡くなった方の名義になっていたのですが、かたくなに「土地の名義変更だけでいいです。」とおっしゃられるため、なぜそれでいいのかその理由を聞いてみました。そうすると、「知り合いの方が、相続登記義務化の対象は、土地だけだから、建物は必要ない。」とのことでした。

ちょうど今頃の季節になると、どうしてもご高齢の方たちの体調が悪くなってしまう傾向があります。以前、介護施設の施設長の経験がありますので、近所の住宅街で救急車の音を聞く頻度が上がってくるので、どうしても意識してしまいます。

先日、相続の問い合わせがあり、ご主人が亡くなり相続が発生したのですが、お互いに再婚であり、再婚前にそれぞれに子供がいた、というケースでした。