36:突然亡くなった結婚前の夫のNISA口座の調査
先日、ご相談で、結婚間近の男性が、婚約者にデジタル資産をあげたいと言っていたので、亡くなった男性のご両親から、その調査方法についての問い合わせがありました。
1.遺産分割協議の期限
2.遺産分割協議を長年しないリスク
3.なぜ、特別受益や寄与分の制度があるのか
4.期限後に遺産分割する場合
5.遺産分割協議についての民法改正はいつからか
6.その他の法律による期間制限について
7.まとめ
遺産分割協議には、法律上の期限はありません。つまりいつ行っても問題はないということです。しかし、2021年4月の民法改正により、「特別受益」と「寄与分」の内容が変更されたことにより、影響が出ています。
①特別受益とは
相続開始後10年が経つと、被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益
➁寄与分とは
相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分
これらの特別受益・寄与分について、相続開始後10年経過すると、その権利を主張できなくなってしまいました。
そのために、遺産分割協議を10年以内にする必要があると言われるようになりました。
遺産分割がなされないまま長期間経過すると、その間に発生した相続などにより権利関係が複雑になり、所有者不明土地が生じる恐れが出てきます。仮に、土地を購入したい人がいても、誰から購入すればいいかわからず、結果として土地を活用できない、という事態にもつながります。
そのために、遺産分割協議を早期にするよう促すために、特別受益・寄与分の主張に期間制限を設けられました。
特別受益とは、一部の相続人が被相続人から財産を受け取っていた場合、すでに財産を受け取った相続人が相続する財産を、法定相続分より少なくする制度です。
一方、寄与分とは、被相続人が財産を維持・形成したことに貢献した相続人がいる場合、財産の維持形成に貢献した相続人が相続する財産を、法定相続分より多くする制度です。
このように、特別受益や寄与分を考慮することで、公平に財産を相続させることにつながるためです。
期限を過ぎると「特別受益」や「寄与分」を主張できなくなり、法定相続分で遺産分割をすることになります。そのため、「特別受益」や「寄与分」を主張すれば、多くの遺産をもらえた方にとってはリスクとなります。
ただし、相続人全員が同意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。が、話し合いが折り合わなければ、家庭裁判所において「遺産分割調停」「遺産分割審判」となり、審判まで言った場合、「特別受益」「寄与分」を無視した、法定相続分に従った財産を相続させるような審判を下すことになります。
民法改正は、2023年4月1日から施行されます。また、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用され、その場合、施行日から5年間の猶予期間となっていますので注意が必要です。
それでは、今回の民法改正で10年以内に遺産分割協議をすれば安心・・・というわけではありません。他にも法令による期間制限を受ける場合があります。
①不動産登記法の改正
2024年4月1日より、不動産登記法が改正され「相続登記義務化」が始まります。
相続が発生し、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすることが義務づけられました。また、②遺産分割協議が成立したときは、成立した日から3年以内に名義変更登記をすることが義務づけられています。これらの義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。
3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、この過料を免れるためには、いったん法定相続分による相続登記をするか、相続人全員の「相続人申告登記」をしておく必要があります。法定相続分による登記は、登録免許税等が発生しますし、「相続人申告登記」をしたとしても、そのまま不動産を売却することはできませんし、その間に新たな相続が発生するリスクも抱えています。
➁相続税申告
相続税申告が必要な場合、相続が発生したことを知った日から10カ月以内に申告し、納税しなければいけません。申告期限内に申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。
また、10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など相続税額を低くする特例が使えません。相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、その後遺産分割が成立した際に更正請求を行うことで、特例の適用を受けて納めすぎた金額の還付を受けることはできます。ただし、更正請求の手間が増える、相続税申告時の納税額が高くなり納税資金を確保する必要が生じるため、できるだけ期限内に遺産分割協議を済ませておいた方が、手間はかかりません。
遺産分割協議自体には法律上の期限はありませんが、特別受益や寄与分の主張が制限される期限、相続登記期限、相続税申告期限、といった期限があります。
これらの期限近くに慌照ることのないよう、早めに専門家に相談し、期限内に遺産分割協議をまとめることをお勧めいたします。
先日、ご相談で、結婚間近の男性が、婚約者にデジタル資産をあげたいと言っていたので、亡くなった男性のご両親から、その調査方法についての問い合わせがありました。
相談者の方から相続登記のご依頼があり、被相続人の不動産を特定するために「固定資産材評価証明書」の取得をお願いいたしました。被相続人は、生前離婚歴があり、離婚の際、財産分与を受けていました。しかし、ずいぶん前に亡くなっており、登記簿上の名義人の住所と、被相続人の最後の住所地が同じでしたので、住民票の除票の写しもしくは戸籍の附票の取得をお願いいたしました。
生前贈与のために相談に来られた方で、登記簿を確認すると「平成の大合併」で、地番の変更はありませんが、平成18年に○〇郡から○〇市に編入されていましたが、登記簿を確認すると平成18年以前に、相続登記がされていて、そのために旧住所で登記がされている状態でした。
先日の相談で、遺言書に「特別受益の持ち戻し免除」の条項を入れると、遺留分対策になるのかという質問を受けました。