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(論点)職務上請求の正しい利用方法とその限界:相続登記における戸籍取得の問題

司法書士や弁護士など、特定の職務を持つ専門家には、その職務を遂行するために特定の公的書類を取得する権限が与えられています。その一つが「職務上請求」であり、これは職務を遂行するために必要な場合、戸籍や住民票などの公的書類を取得できる制度です。しかし、職務上請求を利用できるのはあくまでその業務遂行において必要な範囲に限られており、不正な利用は法律や倫理の観点から厳しく制限されています。
今回、ある相談者から「相続登記は自分で行うので、戸籍だけ取得してほしい」という依頼を受けた場合、職務上請求を行うことは適切なのかという疑問が浮かびました。本稿では、この問題について、職務上請求の正しい利用範囲と、その限界について解説します。
目次
- 職務上請求とは何か
- 職務上請求の利用範囲:相続登記における実際のケース
- 相続登記を依頼しない場合の戸籍取得の問題点
- 目的外利用と職務上請求のリスク
- 正しい職務上請求の利用方法
1. 職務上請求とは何か

「職務上請求」とは、弁護士や司法書士が業務を遂行するために、公的機関から戸籍や住民票などの書類を取得できる権限です。これは依頼者からの依頼内容を実現するために必要な場合に限り行使できるものであり、その目的以外での使用は禁止されています。
たとえば、相続登記や成年後見などの手続きを行う際、必要な書類として相続人全員の戸籍や住民票が必要となります。こうした場合、依頼者のために、司法書士は職務上請求を用いてこれらの書類を取得することが認められています。
2. 職務上請求の利用範囲:相続登記における実際のケース

職務上請求が許されるのは、司法書士が自身の職務遂行に必要な場合のみです。たとえば、相続登記の手続きを依頼された場合、その手続きに必要な書類として相続人の戸籍謄本や住民票が必要となるため、この場合に限り職務上請求を利用して取得することが正当化されます。
しかし、依頼者が相続登記を自ら行う意思を持っている場合はどうでしょうか。この場合、戸籍の取得を依頼者が司法書士に求めることがありますが、ここに注意すべき点があります。それは、司法書士が業務上取得した戸籍が、果たして実際に相続登記に使用されたかどうかの確認が困難であり、目的外で利用されるリスクがあることです。
3. 相続登記を依頼しない場合の戸籍取得の問題点
仮に、相続登記を依頼せずに、戸籍取得だけを司法書士に依頼するケースを考えてみます。この場合、司法書士は本来の職務として相続登記を行っていないため、その業務遂行に必要な範囲で職務上請求を行う権限がない可能性があります。すなわち、職務上請求は依頼された業務(この場合は相続登記)の遂行を前提として行使されるものであり、業務そのものが依頼されていない場合には、その利用は不適切です。
また、戸籍が相続登記に使用されたかどうかを確認する方法が存在しないため、不正利用のリスクが高まります。こうした目的外の利用が発覚した場合、司法書士としての信用が損なわれるだけでなく、法的な問題に発展する可能性も否定できません。

4. 目的外利用と職務上請求のリスク
職務上請求で取得した戸籍や住民票を、目的外に利用することは法的に問題があります。具体的には、司法書士が職務上請求で取得した書類を、相続登記の目的ではなく、依頼者の個人的な利用のために提供した場合、それは職務上請求の本来の目的を逸脱していると言えます。
また、職務上請求によって取得した書類が、依頼者の個人的な目的で利用され、その後にトラブルが発生した場合、司法書士としての責任が問われる可能性があります。こうしたリスクを避けるためにも、職務上請求を行う際には、その目的が明確であり、かつ依頼者からの正式な依頼に基づいていることが重要です。
5. 正しい職務上請求の利用方法
以上を踏まえ、私の事務所では、職務上請求を利用する際には、必ず「相続登記」を含む手続きそのものを正式に依頼いただいた場合に限り利用するようにしています。このようにすることで、目的外利用のリスクを回避し、依頼者との信頼関係を保つことができるのです。
相続登記を自ら行う方のために戸籍を取得するという要望に対しては、その趣旨を理解しつつも、司法書士としての権限の範囲を超える行為であるため、お断りすることが適切であると考えます。このようなケースでは、依頼者に対して職務上請求の本来の趣旨を説明し、必要な書類はご自身で取得していただくよう促すことが重要です。
結論
職務上請求は、司法書士がその業務を遂行するために重要な権限ですが、それを適切に利用しなければリスクが生じます。特に、相続登記を依頼されていない場合における戸籍取得の問題は慎重に扱うべきです。司法書士としての信頼性を守るためにも、職務上請求はその本来の目的に即した範囲で行い、依頼者にもその趣旨をしっかりと説明することが求められます。

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