平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

(論点)古い仮登記を発見したがどうやって消すのか?

2025年03月27日

古い仮登記が存在する場合、相続登記を完了しても不動産の売却が難しくなることがあります。仮登記とは、一定の条件が満たされることを前提に、本登記が行われるまでの間、権利保全のために行われる登記です。古い仮登記が残っている場合、その不動産に対する権利関係が曖昧な状態になり、売却先の買主や金融機関から不安視され、売却がスムーズに進まないことがあります。このような場合の対処法として、以下の方法が考えられます。

目次

1.はじめに

2.仮登記の抹消手続き

3.仮登記権利者が死亡している場合

4.裁判手続きによる仮登記抹消

5.消滅時効の主張

6.仮登記を残したまま売却する場合

まとめ


1. 仮登記の抹消手続き

 最も一般的な方法は、仮登記の抹消を行うことです。仮登記を抹消するためには、仮登記権利者(仮登記に基づいて将来の権利を主張できる者)からの同意を得る必要があります。仮登記権利者が同意し、抹消登記申請を共同で行うことで、仮登記を抹消することができます。

 ただし、仮登記権利者が所在不明であったり、死亡している場合は、同意を得ることが難しい場合があります。その場合には、以下の方法を検討することになります。

2. 仮登記権利者が死亡している場合

 仮登記権利者がすでに死亡している場合は、その相続人と協議を行い、相続人から仮登記の抹消同意を得ることが必要です。相続人に連絡がつく場合は、相続登記を行った上で、相続人と共同で仮登記の抹消手続きを進めることが可能です。

 しかし、相続人の連絡先が不明であったり、相続人が仮登記の抹消に協力しない場合には、裁判所に申し立てることが必要になる場合もあります。

3. 裁判手続きによる仮登記抹消

 仮登記権利者が協力的でない場合や、所在不明で連絡が取れない場合は、裁判所に仮登記の抹消を求める訴訟を提起することが可能です。この手続きは時間と費用がかかる場合がありますが、裁判で勝訴すれば仮登記を抹消することができます。

 また、仮登記権利者の所在が不明の場合は、仮登記の抹消に関する公示送達という手続きも検討されます。これは、権利者に連絡が取れない場合に、裁判所を通じて公告することで抹消手続きを進める方法です。

4. 消滅時効の主張

 仮登記には通常、一定の条件が付随している場合があります。たとえば、売買予約や抵当権に基づく仮登記などです。これらの条件が実行されずに長期間が経過した場合、仮登記の権利が消滅時効にかかっている可能性があります。消滅時効が成立している場合には、仮登記権利者がその権利を主張することができないため、時効を主張して仮登記の抹消手続きを進めることができます。

 ただし、不動産の一般的な仮登記には、時効による消滅の制度はありません。仮登記の原因となる債権の時効によって、仮登記の効力が消滅する場合があります。そして、この場合も原則共同申請です。単独申請が例外的に認められる場合がありますが、その場合は、仮登記名義人から行うケースと、利害関係人(登記名義人を含む)で借り登記名義人の承諾書(印鑑証明書付)を添付する必要があります。

5. 仮登記を残したまま売却する

 仮登記を抹消せずに売却する方法もありますが、この場合、買主が仮登記のリスクを理解し、受け入れる必要があります。通常、仮登記がある物件は市場価値が低く評価されるため、売却価格の減額交渉が発生する可能性があります。また、買主が仮登記の問題を解決するために時間と費用を要する可能性があるため、事前にしっかりと合意を得ることが必要です。

※買主の同意が必要なため、現実的ではありません。

まとめ

 古い仮登記が残っている不動産は、相続登記を完了しても売却が難しい場合があります。その対処法として、仮登記の抹消手続きを行うことが最も一般的な方法ですが、仮登記権利者が死亡していたり所在不明の場合は、裁判手続きを行う必要があります。また、場合によっては消滅時効の主張や、仮登記を残したまま売却する方法も検討することができます。いずれにしても、専門家の助言を受けながら慎重に対策を進めることが重要です。

最新のブログ記事

人生の終わりに向けて、財産の相続や処理について考えることは非常に重要です。特に独り身であり、相続人が限られている場合、適切な準備をしなければ、遺産が放置されたり、家族に不必要な負担をかける可能性があります。本記事では、独り身で親が他界し、相続人が弟のみでその弟も相続を放棄するといった状況において、どのように財産が処理されるのか、そして必要な手続きについて解説します。遺言書を作成する意義や、相続人がいない場合の財産処理の流れについても詳述します。

離婚後に親が相続対策を進める際、過去に別れた配偶者との間にできた子供に財産を贈与しようとするケースや、生命保険の受取人としてその子供を指定する場合があります。しかし、このような提案に対して、子供が財産を受け取ることを拒否する場面も少なくありません。なぜなら、単純に親からの財産を受け取ることが利益にならない、もしくは心理的・実務的な理由で負担となることがあるからです。本稿では、そうした背景を具体的に解説し、子供が財産を受け取ることを躊躇する主要な理由を考察していきます。

相続対策の一環として、財産を減らす方法や、養子縁組を活用して法定相続人の数を増やすことが一般的に行われます。しかし、法律上と税務上では異なる基準が存在し、それらを理解せずに対策を講じると、思わぬ結果になることも少なくありません。本記事では、養子縁組による法定相続人の増加と財産を減らす方法に焦点を当て、相続対策を進める際に気を付けるべき法的・税務的側面を解説します。