香川県の相続手続きで、見落としがちな"落とし穴"に気づいていますか?登記・相続税・遺産分割で後悔しないために、香川県 高松市の司法書士・税理士による無料相談会(毎月第3水曜開催)でプロに相談しましょう。90分対応・完全予約制。
遺産分割協議の解除について

相続発生後、遺産分割協議をして一度は決まった遺産分割。長男が母親を扶養するということで、他の相続人より多くの分割を受けていたのに、長男はその義務を尽くさないときに、他の相続人から、当該遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。そもそも、一度決まった遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。この辺りについて解説していきます。
目次
1.遺産分割協議の解除
2.事例で遺産分割協議の解除について考える
3.どうすれば遺産分割協議を解除できる
4.まとめ
1.遺産分割協議の解除
遺言の中に負担付遺贈というものがあります。財産を特定の人に遺贈する代わりに、相続が発生するまで、残された奥様の世話をしてほしいという条件付きだった場合、受遺者が世話をしなかった場合、相続人は相当の期間を定めてその履行の催告をすることができます。 この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができることになっています。
それでは、相続発生後に、相続人全員が集まり協議して遺産の分割方法を決めた場合、その相続人の一人から当該遺産分割協議を解除できるのかといった問題があります。各家族において事情は様々ありますが、特定の相続人に遺産を多く分割したのに、その時に付加した条件を履行しない場合、負担付遺贈のように解除できるのでしょうか?
2.事例で遺産分割協議の解除について考える
父親が亡くなり相続が発生しました。遺産分割協議の際、残された母親の面倒を見る(扶養する)という条件で、長男が他の相続人より多くの遺産をもらうことで合意しました。
ところが、その長男が母親の扶養義務を尽くさない・・・・。
業を煮やした次男が、遺産分割の解除を言い始めましたが、果たして解除することはできるのでしょうか?
結論から言いますと、上記の場合ですと解除することができません。
「(最判平元.2.9)
遺産分割協議において、共同相続人の一人が他の相続人に対して負担した債務を履行しないことを理由に当該遺産分割協議を解除することはできない。」
この理由は、遺産分割協議はもともと遺産の分割そのものを目的とするもので、それは協議の成立とともに終了しています。解除の原因となるべき不履行が概念できないということです。解除を認め、遺産を再分割するということになると法的安定性が著しく害されてしまうことが理由です。
それでは、一度成立した遺産分割協議は、解除することはできないのでしょうか?

3.どうすれば遺産分割協議を解除できる
上記のように法定解除(債務不履行解除)はすることができませんが、合意解除はできます。(共同相続人全員で合意して、新たに遺産分割協議を行うこと)
当事者間の新たな契約となるので問題がないということです。
そもそも当事者全員が合意しているのだから、法的安定性は害さないということなのでしょう。

4.まとめ
遺産分割協議において、共同想像人の一人が他の相続人に対して負担した債務を履行したことを理由に当該遺産分割協議を解除することができないとする判例により否定されています。この解除を認め遺産の再分割を許すことは、法的安定性が著しく害されることが理由です。
遺産分割協議を契約とみて法定解除(民法541条)を相続人の一人から相当期間を定めて催告後、期間経過での解除ということはすることはできませんが、共同相続人全員の合意により解除することができるということです。

最新のブログ記事
【第3回】遺言書に書けること・書いてはいけないこと ― その一文、法的効力はありますか? ―
「遺言書にどこまでのことを書けるのか?」
これは、実際に遺言書を作ろうとした方が直面する、意外に重要な問題です。
【第2回】遺言書の種類と特徴を知ろう ― 自筆証書・公正証書・秘密証書の違いとは? ―
「遺言書を作っておきたいけれど、どんな種類があるのかわからない」
これは多くの方が抱える疑問です。遺言書と一口に言っても、その形式によって効力や手続き、作成にかかる費用や手間が大きく異なります。
【第1回】なぜ今、遺言書なのか? ~遺言書の需要が高まる背景とその意義~
「遺言書は特別な人が書くもの」と思っていませんか?
かつては資産家や高齢者だけの話と思われがちだった遺言書ですが、今では年齢や財産の多寡を問わず、関心を持つ方が急増しています。背景には、超高齢化社会の進展や家族構成の多様化、そして相続トラブルの増加といった社会的な変化があります。