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相続登記

2023年06月18日

令和6年4月1日に相続登記が義務化され過料が科される罰則が適用されます。それでは、一般的な相続登記についてどのようにすればよいのか?申請書、添付書類、司法書士の存在意義について解説をしていきたいと思います。

目次

1.相続登記とは

2.相続登記に必要な書類

3.相続登記の申請書はどのように書けばよいのか

4.相続登記しなかった場合のデメリット

5.まとめ


1.相続登記とは

 相続登記は土地・家屋・マンションなど不動産の所有者が亡くなった場合に、相続人への名義変更を行う手続きのことを指します。手続きが必要な理由は、相続登記を怠った場合に不動産の所有者が不明確になることで、争いが起きたり売買が自由にできなくなるなど不利益を被る可能性があるためです。

 現状(令和6年4月1日以前)、相続登記の期限は定められていないため、放置しても罰則などは発生しません。そのため自発的に手続きを行わなければ、どんどん後回しになっていくということです。

 その結果、所有者不明土地が九州の面積と同じ程度に膨れ上がったり、所有者が特定できないような家屋が空き家となり、空き家問題が発生する原因となってきました。管理ができない不動産を処分するにも、所有者がわからず何もできないといった状況から、法令の改正や新たな制度の整備により、今後義務化に向けた準備が少しずつされているわけです。

2.相続登記に必要な書類

 それでは、具体的に相続登記をする際に必要な書類を確認していきます。例示するものは、親子間の相続発生に関するものです。両親や兄弟姉妹が相続人となる場合には、例示するものとは異なりますので、必ず専門家に相談するようにしてください。

 ①被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍一式

 ➁相続人の戸籍

 ③当該不動産を受ける相続人の住民票

 (1)遺言書がある場合:当該遺言書

   ㋐自筆証書遺言で自宅などに保管していた場合

    家庭裁判所での検認手続き済みのもの

   ㋑自筆証書遺言で法務局に保管していた場合

    法務局へ必要書類をそろえて申請書を提出し取得した遺言書

   ㋒公正証書遺言の場合

    当該公正証書遺言書の正本又は謄本

 (2)遺言書がない場合:相続人全員で遺産分割協議を経て遺産分割協議書を作成

   遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書

 添付する書類は、上記の通りです。(2)の遺産分割協議が整わず、家庭裁判所の調停・審判があった場合には、調停書又は審判書の正本が必要です。

 ※これらの書類は原則原本を提出しなければなりませんが、コピーに「原本に相違ない」旨の記載をして「原本還付」としておけば、原本還付が可能です。必ず申請時には原本の提出が要求されますので、コピーだけ添付して申請しても受け付けてもらえないので、注意してください。

3.相続登記の申請書はどのように書けばよいのか

 法務局が示している申請書についてみていきましょう。

(法務局HPから引用)

      登 記 申 請 書

登記の目的  所有権移転

原   因  令和  年 月  日相続

相 続 人 (被相続人         )

(申請人)

 連絡先の電話番号  -    -    

添付情報

 登記原因証明情報 住所証明情報

□登記識別情報の通知を希望しません。

令和  年 月  日申請    法 務 局

課税価格 金    円

登録免許税 金    円

不動産の表示

 不動産番号

 所   在

 地   番

 地   目

 地   積

 不動産番号

 所   在

 家屋番号

 種   類

 構   造

 床 面 積

(引用終わり)

 先日の無料相談会で上記記載例に自分なりに書き込んだ申請書を持参し、見てほしいと言ってくる方もいらっしゃいますが、それは、登記を生業とする司法書士としてはお答えしかねます。こういったノウハウを教えてほしいとの相談は、受け付けておりません無料相談は、「相続は発生したが、何をしていいかわからない」方への法律的なアドバイスになります。すでに「ゴール地点である登記」を目指されている方につきましては、そのまま申請書を法務局に提出し指示を仰いでください。

 申請書に記載した申請人が、新しい所有者であることを証明するために「添付書類」が必要になってくるわけでして、専門家により相続人の調査や遺産分割協議の実施の有無などすべて含めてのご依頼者のご希望に沿ったオーダーメードの相続登記となりますので、テンプレに書いただけでは、法務局側もなかなか受け付けていただけないと思います。

 また、中には「相続登記は簡単だった。また、相続が発生したら自分でする。司法書士なんていらない。」とおっしゃる方もいましたが、果たして、その登記は本当に今後のことも考慮した上での内容だったのでしょうか?父親の土地と家屋の相続登記だったみたいですが、本人と母親の法定相続分による登記をしたそうです。それでは、母親が施設等に入所して不動産を処分してその利用料に充てたいと考えた場合、できるのでしょうか?共有での相続登記をした場合、仮に母親が認知症を患ってしまった場合には、処分はできないです。相続分のみを買い取る専門の業者も存在はしますが、かなり買いたたかれます。そう言った事態にならないように、事前にヒアリングを実施し、ご依頼者のご希望に合うように相続登記を実施しているのが専門家の存在意義なのではないかと思います

4.相続登記しなかった場合のデメリット

 4-1.相続関係が複雑になり遺産分割協議が難航する

  何世代も相続登記を放置した場合、相続関係が複雑になり、調査に時間がかかる上、調査により見つけ出した相続人との遺産分割協議も難航する傾向があります。特に、離婚された前妻のお子様との場合や、疎遠になった親族との場合などがありえますので、令和6年4月1日の相続登記義務化に関係なく、遺言書作成や早めの相続登記をして対策しておくことが重要です。

 4-2.相続登記を放置すると相続人の債権者に差し押さえられる場合がある

  相続人の中に借金をしている方がいる場合、その債権者が代位で法定相続分による相続登記を実施し、その相続人の持ち分を差し押さえられてしまう場合があります。たとえ遺言書があり、すべてを他の相続人に相続させる旨の遺言書があっても、登記がなされてしまったあとでは、法定相続分以上の持ち分を債権者に対抗できませんので注意が必要です。

 4-3.売却等の処分ができない

  不動産の処分をするには、相続登記をしなければなりません。なぜなら、売買をする場合、契約の主体は現名義人の被相続人(亡くなった方)は、なれないからです。

  時間がたって、今処分したいといったとき、相続登記に時間がかかってしまい機会損失をする場合も考えられます。相続が発生するごとに相続登記をすることが重要です。


5.まとめ

 相続登記放置のリスクは、今まで述べた通りです。相続登記を専門家である司法書士に任せるメリットとしては、個々の相続の状況や今後の事情をヒアリングすることで、ご依頼者にマッチした相続登記のご提案ができる点にあります。まさに、ご依頼者ごとのオーダーメードといった感じですね。

 ぜひ、現状放置されている相続登記がある方は、司法書士への相談をしてみてはいかがでしょうか。

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