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最近断った集客営業(EAJ問題)

昨年の年末にN社から電話がありました。それは、会社の福利厚生の一環で先生に遺言業務を担当していただきたい。」というもの。しかしよくよく話を聞くと、自分の会社ではなく、そういったサービスを売りにして集客をする営業でした。
そして、先日もM社から電話があり、「従業員の福利厚生で、相続の相談をしてほしい。」というものでした。これも、自社の従業員ではなく、そういったサービスを展開してその項目の一つとして相続業務をお願いしたいという内容でした。
私は、理由を説明して、すべて断りました。なぜ問題があると判断したのか解説いたします。
目次
1.司法書士法について
2.EAJ問題
3.「福利厚生」をうたった集客はどうなのか
4.不動産会社に営業に行った時の話
5.まとめ
1.司法書士法について
「司法書士法施行規則第26条
(依頼誘致の禁止)司法書士は、不当な手段によつて依頼を誘致するような行為をしては ならない。
司法書士倫理第13条第2項
(不当誘致等) 司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、その対価を支払ってはならない。」
とあります。
つまり、不当な手段での依頼者の誘致や、対価を支払っての依頼者の紹介なんかはだめということです。さらには、紹介料を受け取って顧客を他の業者に紹介するのもだめです。
法律を文字通り読めば、対価の有無にかかわらず不当な手段による集客はだめということがしっかり書かれています。

2.EAJ問題
(東京司法書士会から司法書士連合会への照会)
「日本司法書士連合会 会長 今川 嘉典 様
登録司法書士がEAJ社に対し「システム利用料」を支払うことは、司法書士施行規則26条(依頼誘致の禁止)に違反するおそれのある行為であり、また、司法書士倫理第13条2項(不当誘致等)によりしてはならない行為に該当するものと考えられますが、本件について法令、会則、司法書士倫理の違反又は違反のおそれの有無について、貴連合会の見解を回答していただきたく、照会します。
東京司法書士会 会長 野中政志」
(司法書士連合会からの回答)
「東京司法書士会 会長 野中政志様
司法書士による「システム利用料」の支払いに関する照会について(回答)
令和2年7月 14日付東司発第 109号にて照会のありました標記の件につきましては、下記のとおり回答いたします。
記
株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(以下「EAJ」という。)に対して司法書士から支払われる「システム利用料」が、司法書士が受託する業務に応じて支払われるものであるなら、その司法書士の行為は貴見のとおりと考えます。当該司法書士は、EAJが介することによって業務の依頼を受けているのであって、EAJに登録していなければ、依頼を受けることがないのであるなら、「システム利用料」は実質的に業務依頼に対する対価と見られるからです。
日本司法書士連合会 常務理事 長田 弘子」(引用)
EAJに登録していた司法書士は懲戒されたそうです。
法に携わる者が、法令違反をしたのでは話になりません。
ただし、グレーなものもたくさんあります。私は、グレーなサービスについては手を出さないように注意しています。
3.「福利厚生」をうたった集客はどうなのか
N社は私のことをしきりに「行政書士の先生」と言っていたので、行政書士ターゲットの営業だと思います。行政書士には、今のところこのような規制はないのですが、司法書士は先に述べた通りあります。ですので、自分が司法書士でもあることを伝えると「先生。行政書士でやればいいじゃないですか。」と言ってきたのできっぱりお断りしました。なぜなら、何か問題があっても責任なんてとる気がないと感じ取れたからです。私は行政書士にも登録はしていますが、司法書士も登録しているわけで、上記見解が出ている以上、絶対に受けません。
M社については、初めに「会社の従業員の福利厚生で・・・・」とさも自身の会社の従業員の話のように説明してきました。すでに「福利厚生」というキーワードに聞き覚えがあったので、「貴社の営業所は香川県にあるのですか?」と尋ねると、東京にしか事務所はないと言いました。そうすると、「福利厚生」という商品を他の会社に提供し、司法書士サイドか依頼者サイドから「対価」を得て専門性のある司法書士業務に司法書士ではない会社が介在するということになります。この構造、まさにEAJと同じではないですか。私は理由を話し受けられないことを話をすると「他の先生方も協力していただいています。」というので「その先生方、懲戒処分になるかもしれませんよ。大丈夫ですか?」というと引きさがりました。邪推するとウソだったのかもしれません。

4.不動産会社に営業に行った時の話
「司法書士の先生方の報酬はですね・・・1万円ですね。」と言われたことがあります。開業したばかりの不動産屋への営業のことです。私は、応接室の奥に招かれ、責任者が入り口側に鎮座して、私が「はい」というまで、出させない威圧感を感じましたが、どれだけ粘っても私は「はい」とは言いませんでした。「Aさんも受けてもいいとおっしゃってるんですが、先生も協力していただけると嬉しいです。」と他の新人司法書士の具体的な名前を出されましたが、私は断りました。すでに、開業前に上記のEAJ問題を知っていたからです。
内容は不動産の仕入れでしたが、不当に安い報酬を設定して収益を上げるつもりかもしれませんが、司法書士が5万の報酬を受け取り、そのうち4万円をキックバックで返すのと、もともと報酬を下げて依頼者を誘致するのと何が違うんだと思いました。これも、構造的にはEAJと同じだと考えます。

5.まとめ
新人司法書士だと集客に苦慮することは当たり前です。だって、誰も知らないわけですから。認知を少しずつ拡大していく努力を惜しみ、楽に集客できるとの言葉に惑わされるのも理解はします。しかし、司法書士の専門は法律です。その法律の解釈を自分でせず、業者の言いなりで協力することは、専門家として恥ずべき行為なのではないでしょうか。
私もまだまだ若輩者ですが、依頼者から見れば、1年生もベテラン先生も「専門家」です。このことを肝に銘じて、日々業務をしていきます。

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