平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

【第5回・最終回】司法書士が語る「生前対策」総まとめ 遺言・後見・不動産…後悔しないために今すべきこととは?

2025年10月31日

「相続のことで揉めたくない」「もし認知症になったらどうなるのか不安」「自分が亡くなった後、家族に迷惑をかけたくない」――そんな思いを抱く方は少なくありません。

しかし、遺言や成年後見制度、不動産の名義整理など、実際に何をすればいいのか分からないという声も多く聞かれます。
そこで本記事では、司法書士の視点から、相続や認知症に備えるための「生前対策」を総合的に解説
これまでの連載で取り上げたテーマを整理しながら、「何から始めればいいか」が分かる内容となっています。

目次

  1. 生前対策とは?──目的を明確にする
  2. 「遺言」は最強のトラブル予防ツール
  3. 「成年後見制度」と「任意後見契約」の違い
  4. 不動産の名義と管理にまつわる注意点
  5. デジタル遺産への備えも必要
  6. 専門家を味方につけた進め方
  7. まとめ:今日からできる第一歩とは

1. 生前対策とは?──目的を明確にする

 「生前対策」とは、自分の死後や判断能力が衰えたときに備え、法的・財産的な問題を未然に防ぐための準備です。
 大きく分けると以下の3つに分類されます。

  • 相続対策(遺言書の作成、財産の分け方の指定など)
  • 認知症対策(成年後見制度、家族信託など)
  • 財産管理対策(不動産や預貯金、デジタル資産の整理など)

 まずは「何を目的に対策をするのか」を明確にすることで、手段の選択を誤らずに済みます。

2. 「遺言」は最強のトラブル予防ツール

 遺言がないと、遺産は法定相続人全員で分け合う「遺産分割協議」が必要となります。これが相続トラブルの原因になりやすいポイントです。

 遺言書があれば、基本的にその内容が優先され、争いが起きにくくなります。

遺言でできること:

  • 財産の分け方の指定(例:長男に自宅、次男に預金など)
  • 法定相続人以外への財産の遺贈(例:内縁の妻や孫など)
  • 遺言執行者の指定
  • 祭祀承継者の指定(お墓の管理など)

 形式や内容を誤ると無効になるため、公正証書遺言を司法書士とともに作成するのが確実です。

※ただし、推定相続人と意思疎通のない遺言書について、効力発生時にトラブルになる可能性があります。意思疎通できるなら必ず遺言書作成時に意思疎通しましょう。

3. 「成年後見制度」と「任意後見契約」の違い

 認知症になってからでは、契約や財産管理が困難になります。
 そこで活用されるのが「成年後見制度」ですが、以下のように2つの制度があります。

 任意後見は、本人の意思で信頼できる人に財産管理を任せることが可能です。
 一方、法定後見は家庭裁判所主導で進むため、自由度はやや下がります。

4. 不動産の名義と管理にまつわる注意点

 不動産は「動かせない財産」であり、遺産分割が難航する要因になりやすいです。

  • 名義が故人のままだと売却・賃貸・担保設定ができない
  • 共有名義は管理・処分に制約が多い
  • 認知症になった場合、法定後見が必要で売却困難に

 生前に名義変更や売却、または家族信託で管理権限を分けておくなどの工夫が必要です。

5. デジタル遺産への備えも必要

 第4回で詳述した通り、仮想通貨、ネット銀行、クラウドサービス、SNSなどのデジタル資産は、相続時に問題が起こりやすい分野です。

 対策としては、

  • 利用中のサービスを一覧化する
  • パスワードの保管場所を決める
  • アカウントの処理方針を遺言で記載する
    といった情報整理が不可欠です。

6. 専門家を味方につけた進め方

 生前対策は、制度の知識だけでなく、法的・実務的な理解が必要な領域です。

  • 遺言 → 司法書士・弁護士
  • 不動産 → 司法書士・土地家屋調査士
  • 認知症対策 → 司法書士・社会福祉士
  • 相続税対策 → 税理士

 特に司法書士は、「遺言・後見・登記」など生前対策の中核を担う存在です。
 個人の状況に合わせて最適な制度を選び、必要な書類や登記手続きをトータルで支援できます。

7. まとめ:今日からできる第一歩とは

 生前対策は「元気なうちにこそ始めるべき」ものです。
 今できる第一歩として、以下の3点を実行してみましょう。

  1. 財産の棚卸し(預金・不動産・デジタル資産)
  2. 家族構成と人間関係の整理(相続人、関係の有無)
  3. 司法書士など専門家への相談予約

 準備は、「誰かのため」ではなく**"自分自身の安心"のために行うもの**です。
 今日からできる小さな一歩が、将来の大きな安心につながります。

最新のブログ記事

香川県の相続手続きで、見落としがちな"落とし穴"に気づいていますか?登記・相続税・遺産分割で後悔しないために、香川県 高松市の司法書士・税理士による無料相談会(毎月第3水曜開催)でプロに相談しましょう。90分対応・完全予約制。

近年、ネット完結型の金融サービスやサブスクリプションの普及により、「デジタル遺産」の相続問題が急増しています。特に、ネット銀行や仮想通貨、クラウドサービスの契約情報は紙の通帳も郵便も残らず、家族に気づかれないまま放置・消滅するリスクがあります。