平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

【第3回】遺言書に書けること・書いてはいけないこと ― その一文、法的効力はありますか? ―

2025年07月30日

「遺言書にどこまでのことを書けるのか?」
これは、実際に遺言書を作ろうとした方が直面する、意外に重要な問題です。

遺言書は「自分の最期の意思を残す手段」であり、法的に効力のあることを記載すれば、相続手続きに大きな影響を与えます。しかし、すべての思いや希望が法的に有効とは限りません。「書いても意味がないこと」や、場合によっては「トラブルの火種になる記載」も存在します。

この記事では、遺言書に**書けること(法的効力がある記載)**と、書かない方がよいこと・無効となる記載について、実例を交えてわかりやすくご説明します。

目次

  1. 遺言書に書ける「法的に有効な内容」とは?
  2. 意外と知られていない、書けないこと・意味のない記載例
  3. 書かない方がよいケースとは?
  4. 感謝や願いなどの「想い」を伝えるには
  5. トラブルを避けるための注意点
  6. 次回予告:遺言書はいつ書くべきか?最適なタイミングと見直しのポイント

1. 遺言書に書ける「法的に有効な内容」とは?

 遺言書で法的効力をもつ記載内容には、次のようなものがあります。

  • 相続分の指定
     → 長男に全財産を相続させる/妻に1/2を相続させる 等
  • 遺贈(相続人以外への財産の譲渡)
     → 内縁の妻にマンションを遺贈する/介護してくれた娘婿に100万円を遺贈する
  • 遺言執行者の指定
     → 相続手続きを行う「遺言執行者」をあらかじめ指名しておく
  • 認知(婚外子など)
     → 遺言によって非嫡出子の認知が可能
  • 相続人の廃除・廃除の取消し
     → 著しい非行を理由に相続人の資格を奪うこともできる
  • 子の後見人指定
     → 未成年の子がいる場合、後見人を指定しておくことができる

 このように、「財産の行き先」「相続人の範囲」など、相続手続きに直接影響を与えることが書けます。

2. 意外と知られていない、書けないこと・意味のない記載例

 一方で、法的には意味を持たない記載や、そもそも遺言書に書いても効力のないこともあります。

【例1】「次男には何も残さない」「一切の財産を渡さない」

→ 相続人には遺留分という最低限の権利があります。相続人の廃除をしない限り、一方的に排除することはできません。

【例2】「お墓は必ず長女が守ること」

→ 墓守の義務は法的拘束力を持たせにくく、遺言書で指定しても強制できません。

【例3】「家を売らないこと」「借金をしてはいけない」

→ 財産の使い方を縛る内容は、基本的に無効です。相続人の自由を侵害する内容は避けるべきです。

3. 書かない方がよいケースとは?

 書くことができても、「書かない方がよい」内容も存在します。たとえば、

  • 特定の相続人を批判するような記述
     → 感情的な内容はかえってトラブルの原因になります。
  • 家庭内の秘密や過去の出来事の暴露
     → 家族間のしこりを残し、感情の対立を引き起こします。
  • 曖昧な表現(例:「仲の良い人にあげる」「必要な人に渡す」)
     → 具体的でない内容は、無効になったり、相続人間の争いの原因になります。

4. 感謝や願いなどの「想い」を伝えるには

 遺言書は法的な文書であると同時に、人生のメッセージでもあります。
法的効力のある部分とは別に、「付言事項」として、自由な言葉で想いや感謝を綴ることができます。

付言事項の例:

  • 「これまで育ててくれてありがとう」
  • 「長男には多くを任せるが、他の兄弟との関係も大切にしてほしい」
  • 「家族皆が仲良く過ごしてくれることを願っています」

 付言事項には法的効力はありませんが、相続人の心情に訴えるものとして、トラブル回避にもつながる重要な役割を果たします。

5. トラブルを避けるための注意点

 遺言書の内容でトラブルが起こるのは、次のような場合が多く見られます。

  • 財産の分け方が不公平である
  • 説明不足のまま財産配分がなされている
  • 感情的・恣意的な内容で家族関係にヒビが入る

 対策としては、以下のような工夫が有効です。

  • 専門家のチェックを受ける(公正証書遺言の活用も含め)
  • 付言事項で思いを丁寧に伝える
  • 可能であれば生前に家族と意思共有を図る

次回予告

次回第4回では、「遺言書はいつ書くべき?作成のタイミングと見直しのタイミング」をテーマに、若いうちに書いてもよいのか、何歳くらいから準備すべきなのか、またどんなときに内容を見直すべきなのかを解説します。


ご相談のご案内(CTA)

「この内容を書いて大丈夫?」
「遺言の文言に不安がある…」

そんなときは、プロにご相談ください。
アイリス国際司法書士・行政書士事務所では、遺言書の文案チェックや添削、法的効力の確認も承っております。

📞お問い合わせはこちら
アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
▶ 電話:087-873-2653
▶ メール:irisjs2021@gmail.com
▶ お問い合わせフォーム:[https://www.irisjs2021.com/]

最新のブログ記事

香川県の相続手続きで、見落としがちな"落とし穴"に気づいていますか?登記・相続税・遺産分割で後悔しないために、香川県 高松市の司法書士・税理士による無料相談会(毎月第3水曜開催)でプロに相談しましょう。90分対応・完全予約制。

香川県高松市を中心に注目されている家族信託と遺言書。どちらも相続や財産管理に有効ですが、目的や効力、手続きが異なります。この記事では、それぞれの特徴や活用場面を比較しながら、家族の想いと法的手続きを両立させるための生前対策を詳しく解説します。