戦後の住宅難を背景に、持ち家を持つことは長らく「豊かさ」や「安定」の象徴とされてきましたが、バブル期にはこれが極端な形で表れます。企業も住宅取得支援を打ち出し、団塊ジュニア世代を中心に一斉にマイホームを目指す動きが加速しました。「持ち家があって一人前」「借家暮らしは負け組」といった風潮も広まり、住宅購入は一種の社会的義務のように捉えられていたのです。
3.住宅ローンと個人債務の拡大
このような価値観のなかで、多くの家庭が収入に見合わない高額な住宅を購入し、長期かつ高額な住宅ローンを背負うことになります。当時の金融機関は審査を緩くし、「年収の7倍ローン」などの名のもとに、多額の借入を推奨していました。結果として、家計の大部分をローン返済に充てる「ローン奴隷」のような生活が日常化していきました。
4.バブル崩壊後の資産価値下落と生活苦
1991年のバブル崩壊後、地価は急落し、当初の購入価格を大きく下回る住宅が続出しました。ローン残高のほうが家の価値を上回る「オーバーローン」の状態に陥る家庭も多く、ローンを返済し続けても資産は残らないという事態が起きました。住宅の価値が下がり続けるなかで、離婚や失業、病気などのライフイベントによってローンの支払いが困難になる人も増加し、中には自殺に至るケースも報道されました。
5.相続と空き家問題への伏線