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【第3回】「こんなはずじゃ…」を防ぐ!相続で困らないためのデジタル遺産・生前整理術 ~ネット銀行、仮想通貨、サブスク…今からできる7つの備え~

2025年10月29日

近年、ネット完結型の金融サービスやサブスクリプションの普及により、「デジタル遺産」の相続問題が急増しています。特に、ネット銀行や仮想通貨、クラウドサービスの契約情報は紙の通帳も郵便も残らず、家族に気づかれないまま放置・消滅するリスクがあります。

「自分が亡くなった後、家族が困るのではないか」と心配している方は、生前の備えがとても重要です。
この記事では、相続トラブルを防ぐために、生前から取り組める「デジタル遺産整理」の実践方法を7つご紹介します。

目次

  1. デジタル遺産とは?生前整理の必要性
  2. 財産リストを作成する(紙またはデジタル)
  3. ログイン情報の管理・共有方法
  4. サブスクリプション契約の整理
  5. クラウド・ストレージの使い方と整理方法
  6. 家族への伝え方の工夫
  7. 任意後見・遺言書との連携
  8. まとめ:整理は「自分のため」「家族のため」

1. デジタル遺産とは?生前整理の必要性

 「デジタル遺産」とは、ネット上に存在する資産や権利、契約情報のことを指します。例としては以下のようなものがあります:

  • ネット銀行・ネット証券の口座
  • 仮想通貨(暗号資産)
  • PayPay・LINE Payなどの残高
  • 有料サブスクリプション契約(Netflix、Apple Musicなど)
  • クラウドストレージ(Google Drive、iCloud、Dropboxなど)
  • SNSアカウントや電子書籍などの非金銭的資産

 これらは**通帳も請求書も届かないため、遺族に気づかれず消失することも珍しくありません。**だからこそ、生前から「見える化」しておく必要があります。

2. 財産リストを作成する(紙またはデジタル)

 まず第一にやるべきは、財産の一覧を作ることです。
 ネット銀行や暗号資産などは、銀行名や取引所名だけでも記録しておくと、相続人がスムーズに調査できます。

【財産リストの例】

 形式は手書きでもExcelでも構いませんが、定期的に更新し、存在を家族に伝えることが重要です。

3. ログイン情報の管理・共有方法

 ネットサービスにはログインIDとパスワードが不可欠ですが、「家族にすべて教える」のは心理的ハードルが高いものです。そこで活用したいのが以下の方法です:

パスワード管理アプリ

 1Password、KeePass、LastPassなどのアプリにすべて登録し、マスターパスワードだけを家族に伝えることで、一定のプライバシーを保ちながら共有が可能です。

紙のリスト+封筒保管

 IDとパスワードを書いたリストを封筒に入れて信頼できる人に預ける、または自宅金庫に保管する方法も。
 「死後開封可」「○○の机の引き出しにある」などのメモを残しておくと確実です。

※エンディングノートなどにまとめておくと便利です。 

4. サブスクリプション契約の整理

 サブスクは放置すると、死亡後も自動的に課金が続きます。
特にApple IDやGoogleアカウントに紐づいているものは、家族がすぐに解約できないことも多いため、契約一覧を作っておくことが有効です。

 また、「使っていないサブスクは今のうちに解約する」こと自体が整理にもなり、節約にもなります。

5. クラウド・ストレージの使い方と整理方法

 Google DriveやiCloudなどに「大切な書類」「契約書のスキャンデータ」などを保存している方は、フォルダを分かりやすく整理し、「ここを見るとわかる」状態にしておくと安心です。

例:

  • 「財産_一覧.xlsx」
  • 「遺言書(下書き).pdf」
  • 「暗号資産_口座情報」

 Googleには「アカウント無効化管理ツール」という機能があり、一定期間ログインがなかった場合に、指定の家族へ通知・共有ができる仕組みがあります。

6. 家族への伝え方の工夫

 「死ぬ準備をしていると思われたくない」「あまり重くならずに伝えたい」——そんな方は、「もしもの時ファイル」「デジタル遺産ノート」などを作り、"家族へのメッセージ"として伝える形が有効です。

 例えば、

  • スマホに「デジタル資産ノート」という名前で保管
  • エンディングノートの1ページにネット口座のメモを記載
  • 「メールが来たら開けて」などの伝言をしておく

 など、小さな一歩でも大きな助けになります。

7. 任意後見・遺言書との連携

 認知症や突然の事故に備えて、任意後見契約や遺言書に「デジタル資産に関する条項」を盛り込んでおくと、相続人がスムーズに手続きできるようになります。

  • 遺言書に「ネット証券は○○証券で、IDは〇〇、パスワードは別紙参照」と明記
  • 任意後見人に「ネット口座の管理権限」も委任
  • 成年後見制度と連動して、クラウドにアクセスする権限を確保

 など、司法書士に相談しておくことで、"見落とされない財産"として明文化できます。

まとめ:整理は「自分のため」「家族のため」

 デジタル遺産の生前整理は、単に家族のためだけでなく、自分自身の人生や資産を見直す良い機会でもあります。

  • 財産の全体像が把握できる
  • 不要な契約を見直せる
  • いざという時に家族が困らない

 今やっておけば、「いざ」という時に"ありがたかった"と言われる備えになります。

 次回(第4回)は、**「デジタル遺産と法的トラブル」**をテーマに、家族間での争いや、アクセスに関する法律問題、放置された資産の消滅リスクなどを詳しく解説します。

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