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(論点)遺言書の検認手続きについて

2024年11月25日

遺言書の「検認」手続きは、相続において重要な役割を果たしますが、特に自筆証書遺言や秘密証書遺言に関しては、この手続きを経なければ法的に遺言書の内容が執行されません。以下では、家庭裁判所の公式情報を参考に、検認手続きの詳細についてまとめます。公正証書遺言の場合でも、封筒に封印して保管している場合には、検認が必要となるケースがありますのでご注意ください。

目次

1. 検認手続きの概要

2. 検認手続きの管轄と申立て方法

3. 検認手続きの流れ

4. 封筒の開封について

5. 検認の際に通知される事項

6. 検認後の手続き

7. 公正証書遺言の場合は検認不要

8. まとめ


1. 検認手続きの概要

 検認手続きとは、遺言書が適正な形式で保管されていたかを確認し、その存在と内容を明確にするために家庭裁判所が行う手続きです。この手続きは、遺言書の内容の妥当性や有効性を判断するものではなく、あくまで遺言書が適切に保管されていたかどうかを確認するものです。検認が行われることによって、相続人間での遺言書の存在や内容に関する争いを未然に防ぐことができます。

2. 検認手続きの管轄と申立て方法

 検認手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行われます。例えば、被相続人が東京都に住んでいた場合、東京家庭裁判所が管轄することになります。申立ては、相続人や遺言執行者が行います。

 申立て方法としては、家庭裁判所に直接出向いて申立書を提出するほか、郵送での申立ても可能です。郵送による申立てを行う場合は、必要書類を揃えて家庭裁判所に送付し、受付が確認された後に手続きが進められます。申立書に加えて、以下の書類が必要です:

遺言書(原本)

被相続人の戸籍謄本(死亡が記載されたもの)

申立人(相続人)の戸籍謄本

その他、家庭裁判所が指定する書類

3. 検認手続きの流れ

 検認の申立てが受理されると、家庭裁判所は相続人全員に検認手続きの通知を行います。この通知は、検認の日時や場所を伝えるものであり、相続人が手続きに立ち会うことができるように配慮されています。しかし、検認手続きにおいて全相続人が立ち会う必要はありません(最低限、申立人である相続人は田愛が必要です)。立ち会いは任意であり、欠席した相続人に対しても後日、検認の結果が記載された検認調書が送付されます。

4. 封筒の開封について

 自筆証書遺言や秘密証書遺言が封筒に入れられている場合、家庭裁判所の検認手続きが行われるまで封印を開けてはいけません。もし、相続人や第三者が勝手に封を開けてしまった場合でも、検認手続きは進めることが可能ですが、遺言書の内容や信頼性に疑義が生じることもあり得ます。この場合、遺言書の状態が変わっていないか、内容が書き換えられていないかについて、検認手続きにおいて詳細に確認されます。

 封印を開けてしまった場合の法的な罰則については、5万円以下の過料が科される可能性があります(民法第1005条)。過料とは、刑事罰ではなく、行政上の制裁であるため、刑事記録が残ることはありませんが、罰金を支払う義務が生じます。

5. 検認の際に通知される事項

 検認手続きでは、家庭裁判所から相続人全員に対して通知が行われます。この通知には、検認手続きの日時や場所、そして遺言書の検認に関する説明が記載されています。相続人全員が立ち会うことが理想的ですが、先述の通り、立ち会いは義務ではなく、出席しなかった相続人にも検認の結果が通知されるため、手続きの透明性は確保されています。

6. 検認後の手続き

 検認が無事に終了すると、家庭裁判所は「検認済証明書」を発行します。自筆証書遺言や秘密証書遺言を使って相続手続きを進める場合には、この検認済証明書が必要です。特に、相続登記などの法的な手続きを行う際には、遺言書と共に検認済証明書を提出しなければなりません。遺言書が検認されない限り、遺言書の効力を正式に主張することができませんので、相続手続きを進めるための重要なステップとなります。

7. 公正証書遺言の場合は検認不要

 なお、公正証書遺言の場合は、検認手続きは不要です。公正証書遺言は公証人が作成するため、遺言の存在や内容が公証役場に保存され、改ざんの恐れがないと見なされます。このため、公正証書遺言は遺言書の中でも最も安全で信頼性が高い形式と言えます。ただし、封筒に封印して公正証書遺言を保管した場合には検認が必要となりますので、注意が必要です。

8. まとめ

 検認手続きは、遺言書が適正に管理されていたかどうかを確認し、遺言書の存在や内容を確定させるための重要な手続きです。特に、自筆証書遺言や秘密証書遺言を使用する場合、家庭裁判所での検認を経なければ遺言書を法的に執行することができません。

 手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立てを行い、相続人全員に検認手続きの通知が行われます。検認手続きに全相続人が立ち会う必要はありませんが、相続人全員に対して検認結果が通知され、手続きの透明性が確保されます。また、遺言書が封印されている場合、勝手に封を開けることは法律で禁止されており、違反した場合は過料が科される可能性があります。

 検認手続きが完了すると、検認済証明書が発行され、それを基に相続手続きを進めることが可能になります。相続に関わる手続きを円滑に進めるためには、検認手続きを適切に行い、法的な要件を満たすことが重要です。

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