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(論点)被相続人の配偶者が外国人の場合の相続手続きと注意点

2025年03月17日

外国籍の配偶者が被相続人の場合、日本の相続手続きには独自の課題が生じます。戸籍に記載されないため、外国の証明書類の準備や翻訳が必要となり、さらに相続後の在留資格の変更も避けて通れません。本記事では、相続時の戸籍取得や在留資格の届出、別資格への変更手続き、相続税の課題など、外国籍配偶者が直面する重要なポイントについて詳しく解説します。

目次

1.はじめに

2.戸籍取得の問題

3.配偶者の在留資格と届出義務

4.別資格への変更手続き

5.相続税と国際的な課税問題

6.まとめ


1. はじめに

 被相続人の配偶者が外国人である場合、相続手続きは通常の日本人同士の相続と異なる点が多く、特に戸籍取得の難しさや在留資格の変更に関する特別な対応が必要です。今回は、これらの相続に関わる重要なポイントを詳しく解説します。

2. 戸籍取得の問題

 相続手続きを行う際、被相続人の戸籍謄本や、相続人の戸籍が必要になります。しかし、外国籍の配偶者の場合は、日本の戸籍に記載されていないため、外国の出生証明書や婚姻証明書などを提出しなければなりません。これらの証明書を用意する際、外国の行政手続きや公証手続きが関わるため、通常よりも手続きに時間がかかることが予想されます。さらに、これらの証明書は日本語への翻訳が必要で、翻訳文には公証人の認証を受けることが求められる場合もあります。

3. 配偶者の在留資格と届出義務

 被相続人の配偶者が外国人である場合、相続手続きに加えて、在留資格にも注意が必要です。日本人の配偶者等の在留資格を有している外国人配偶者は、日本人の配偶者が亡くなると、その資格が維持できなくなります。

 法律上、配偶者の死亡後、外国籍の配偶者は14日以内に入国管理局に届出を行う義務があります。これを怠ると在留資格の問題が生じ、最悪の場合、在留資格が取り消される可能性があります。この14日以内の届出は、婚姻解消(死亡を含む)に伴うものとして重要な手続きです。

4. 別資格への変更手続き

 被相続人が亡くなった後、外国籍配偶者は6カ月以内に別の在留資格に変更する手続きを進める必要があります。この際、一般的には「定住者」や「就労ビザ」などの在留資格が選択肢となります。

変更手続きを行うためには、以下の条件を満たすことが必要です:

⑴日本での生活基盤が確立していることを証明する

⑵一定の経済的な自立が見込まれること

⑶居住歴や仕事の状況などを基に、日本での生活継続を希望する正当な理由があること

 この手続きに時間がかかる場合があり、早期に対応することが推奨されます。必要な書類としては、被相続人の死亡証明書、外国籍配偶者のパスポートや在留カード、生活基盤を示す書類(例えば賃貸契約書、雇用証明書など)があります。

5. 相続税と国際的な課税問題

 外国籍の配偶者が相続する場合、相続税の問題も重要です。日本国内にある財産については、日本の相続税が課されますが、外国籍の配偶者が外国に居住している場合、二重課税のリスクが生じることがあります。このため、相続税の申告や納税の際には、日頃の居住状況や財産の所在を確認し、国際的な租税条約などを参考にしながら、正確な申告を行うことが必要です。

 また、外国に所在する財産が含まれる場合、その国の法律に従った相続手続きや課税問題に対応しなければならないため、相続に関する専門家や税理士に相談することが強く推奨されます。

6. まとめ

 外国籍の配偶者が日本で相続手続きを行う際は、戸籍の取得や相続税の申告だけでなく、在留資格の変更手続きも非常に重要なポイントとなります。特に、在留資格の届出や変更手続きを怠ると、日本国内での滞在が困難になるリスクがありますので、迅速に対応することが求められます。

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