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(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

2024年06月19日

相続人の中に精神疾患がある方がいる場合の遺産分割協議は、特別な配慮が必要となります。どのような配慮が筆応なのかについて、お話をしたいと思います。

目次

1.成年後見制度の利用

2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処

3.まとめ


1.成年後見制度の利用

 遺産分割協議は、「相続人全員の参加」が要件です。つまり、相続人の中に精神疾患を患っている方がいる場合でも、その方を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。これが大前提になります。性疾患と言っても、どの程度のレベルにあるのかについては、医師の診断にもよると思いますが、意思表示が困難な場合、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。

精神障害がある相続人が意思決定能力を欠いている場合、その相続人の利益を守るために成年後見制度を利用するのが一般的です。この制度では、家庭裁判所が成年後見人を選任し、後見人がその相続人の代理として遺産分割協議に参加します。

成年後見制度には以下の種類があります:

 ①後見:意思能力が欠如している場合に適用され、後見人が全面的に財産管理や法律行為を代行します。

 ➁保佐:意思能力が不十分な場合に適用され、保佐人が特定の行為について同意を必要とします。

 ③補助:意思能力が一部不十分な場合に適用され、補助人が本人の希望に応じて一部の行為について同意を行います。

 家庭裁判所への申立には、申し立てができる方が制限されています。具体的には、本人,配偶者,4親等内の親族,成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」という。),任意後見人,任意後見受任者,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。(裁判所HP引用)

 必要書類は、「申立書」「医師の診断書」「本人の財産に関する書類」などが必要となります。専門家(弁護士・司法書士)に相談するか、裁判所のHPを参照してみてください。

 成年後見人が選任された場合、成年後見人は遺産分割協議に本人の代理人として参加することになりますが、本人の利益を最大限に守るために行動する責任があります。具体的には、遺産分割の内容が相続人にとって不利にならないように注意を払い、適切な分割案を検討します。

 こうしてまとまった遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。この協議書には、すべての相続人(後見人を含む)が署名・捺印する必要があります。精神障害がある相続人の場合、後見人が代理で署名・捺印を行います。協議書の内容が明確で、公平であることを確認することが重要です。

 精神障害がある相続人に対しては、配慮をもって対応することが重要です。必要に応じて、福祉サービスや専門家(弁護士や司法書士など)の助言を得ることも検討してください。精神障害を持つ相続人が適切な支援を受けられるように、家庭裁判所や関連機関と連携することも重要です。

2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処

 特定の事情により利益相反が生じる場合や、成年後見人が適当でない場合などに「特別代理人の選任」必要となります。

 「後見人が他の相続人である場合」には、注意が必要です。この場合、本人と成年後見人との間に、利益相反関係が生じているため特別代理人の選任をする必要があります。

 家庭裁判所への申立ては、利益相反が生じる可能性がある相続人や利害関係者が行います。特別代理人は相続人の代理として適切な判断を下し、その利益を守ります。特別代理人の役割と責任は重大であり、適切な行動が求められます。相続問題において特別代理人が必要な場合は、早めに専門家に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。

 利益相反関係になっているかどうかがよくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。

3.まとめ

 精神障害がある相続人を含む遺産分割協議は、法的手続きや専門的な知識が求められるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、法的な手続きがスムーズに進み、全ての相続人の利益が適切に守られることが期待できます。

以上が、精神障害がある相続人を含む遺産分割協議の基本的な流れとポイントです。適切な手続きを踏むことで、トラブルを避け、円満な遺産分割が実現することが期待されます。

 私の経験ですが、相続関連の話し合いの時に心無い言葉を使う親族の方がいました。その親族の方は、被相続人が生前、土地や山林の所有権を自分たちに移転してほしいと言いましたが、断られたため「あなたの躾が悪いから、引きこもりになるんや。」といったそうです。そもそも、親族には相続権はありませんが、精神疾患になる可能性なんて、今の日本ではだれでもある訳です。私が確認した事案は、言った方が相続人ではないので、遺産分割協議では支障はありませんでしたが、その方たちが遺産分割協議に参加した場合、相当揉めると思います。権利を主張するのも大事なのですが、遺産分割協議に集まった方たちすべてに同じだけの権利があることを念頭に、節度ある対応をしていただきたいです。

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