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(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

2024年10月07日

近年、結婚せずに生涯独身で過ごす「おひとりさま」や、子供がいない「夫婦二人世帯」が増加しており、こうした人々にとって相続は重要な問題となっています。特に、法定相続人がいない場合には、相続に関して特別な対策を講じておくことが重要です。ここでは、おひとりさまの相続対策や、最終的に遺産がどうなるかについて解説します。

目次

1. 法定相続人がいない場合の問題点

2. 遺言書の作成

3. 信託の活用

4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮

5. 成年後見制度の活用

6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?

まとめ


1. 法定相続人がいない場合の問題点

 法定相続人がいる場合は、法律に従って相続手続きが進みますが、法定相続人がいない場合には、相続手続きが大きな問題となります。法定相続人がいないと、財産の行き先が不明確になり、親族や知人とのトラブルが発生することがあります。また、遺産が適切に引き継がれず、最終的に国庫に帰属するリスクも高まります。おひとりさまの場合、以下の点に特に注意して相続対策を行うことが重要です。

2. 遺言書の作成

 法定相続人がいない場合、最も効果的な相続対策の一つは、遺言書を作成しておくことです。遺言書がない場合、財産は最終的に国庫に帰属してしまいますが、遺言書を作成することで、財産の行き先を指定することができます。

遺言書の種類と注意点

 遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、自分で書くことができますが、形式的な不備があると無効になるリスクが高いため、公証役場で作成する公正証書遺言が推奨されます。公正証書遺言は、遺言者が自ら内容を伝え、公証人が作成するため、法的に有効な遺言書を確実に残すことができます。

遺言執行者の指定

 遺言書には、遺言の内容を実行するための「遺言執行者」を指定しておくことも重要です。遺言執行者がいないと、遺言書の内容がスムーズに実行されず、財産分割や名義変更の手続きが遅れる可能性があります。信頼できる第三者や、司法書士・弁護士などの専門家を遺言執行者として指定することで、トラブルを防ぐことができます。

3. 信託の活用

 おひとりさまの相続対策として、「民事信託(家族信託)」を活用することも有効です。信託とは、財産を信頼できる第三者に託し、指定した目的に従って財産を管理・処分してもらう制度です。信託契約を結ぶことで、生前に自分の意志に基づいて財産の管理や処分を行うことができ、相続に関するリスクを軽減することができます。

信託のメリット

 信託を利用することで、遺言書だけではカバーしきれない財産管理の細かい点まで指示を出すことが可能です。例えば、信頼できる第三者に生前から財産管理を委ね、死亡後もその第三者が財産を適切に管理・分配するように指示することができます。これにより、相続手続きが複雑化することを防ぎ、財産の確実な引き継ぎが可能となります。

※信託を利用する場合、財産管理として預金を信託口口座で管理することになりますが、取扱金融機関が少なく、仮に口座の開設をする場合もそれなりの利用料が必要となります。

4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮

 法定相続人がいない場合、遺産を親族や友人、知人に遺贈することができます。遺贈とは、遺言によって特定の人に財産を贈ることを指します。遺贈を活用することで、感謝の気持ちを形にし、親しい人に財産を引き継ぐことができます。

特定の人への遺贈

 例えば、長年世話になった友人や介護してくれた知人に対して、感謝の意を込めて財産を遺贈することができます。遺言書にその旨を明記し、遺産分配を確実に行うための手続きを整えておくことが重要です。

寄付の活用

 また、遺産を慈善団体や社会貢献活動に寄付することも考慮するべき選択肢です。遺産の一部または全部をNPOや公益法人などに寄付することで、自分の財産が社会に役立つ形で活用されることを願うことができます。特に、遺言書で明確に寄付の意思を示しておくことで、確実な実行が可能となります。

5. 成年後見制度の活用

 おひとりさまの相続対策では、認知症などによる判断能力の低下に備えて、成年後見制度を活用することも検討すべきです。成年後見制度は、判断能力が低下した場合に、後見人が財産管理や契約の手続きを代行する制度です。

任意後見制度の利用(身元保証サポートのサービスの一環として行う場合があります)

 任意後見制度を利用することで、あらかじめ信頼できる第三者を後見人として指定し、判断能力が低下した際に財産管理を託すことができます。これにより、本人が健全な状態のうちに意思を反映させ、適切な財産管理が行われるようにすることができます。

6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?

 法定相続人がいない場合、遺言書が存在しないと最終的に遺産は国庫に帰属します。これは、民法に基づき、相続人がいない場合には財産が国に引き渡されるという規定があるためです。しかし、遺言書や信託契約を作成することで、このような事態を回避し、財産を希望する相手に適切に引き継ぐことができます。

特別縁故者への分配

 法定相続人がいない場合でも、特別縁故者(被相続人と生前に親しく付き合っていた人)が家庭裁判所に請求を行えば、財産の一部を受け取ることができる場合があります。ただし、この手続きは裁判所の判断によるため、確実に財産が引き継がれるわけではありません。

※特別縁故者もいないもしくは裁判所が認めなかった場合、その遺産は清算人により清算手続きが行われて、残った遺産については国庫に帰属します。

まとめ

 法定相続人がいないおひとりさまの場合、相続対策を怠ると、財産が望まない形で処理される可能性があります。遺言書の作成や信託の活用、寄付や遺贈の検討、成年後見制度の活用など、事前に対策を講じることで、自分の意思に基づいた相続手続きを確実に進めることができます。また、相続人がいない場合でも、財産を寄付などをする手続きを行うため、遺言書の作成をしておくことが重要です。

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