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(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

2024年09月19日

後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反の問題が生じる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。この論点について、以下に詳しく説明します。

目次

1. 後見人と身元引受人の役割

2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点

3. 利益相反の具体例

4. 法的見解と対策

5. 結論


1. 後見人と身元引受人の役割

 まず、後見人と身元引受人の役割を理解することが重要です。後見人は、被後見人の財産管理や生活上の意思決定を支援する法的な役割を担います。被後見人が判断能力を欠く場合に、後見人がその権限を行使して、被後見人の利益を守ることが求められます。一方、身元引受人は、施設入所時や医療機関での手続きにおいて、被後見人の身元を保証する役割を担い、緊急時の連絡先や、場合によっては医療・介護の意思決定に関与することがあります。

2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点

 後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反が生じるリスクがあります。後見人は被後見人の利益を最優先に考えるべきですが、身元引受人としての役割が重なると、被後見人の利益を損なう可能性が出てくることがあります。

 例えば、後見人が被後見人の財産を管理する立場にある一方で、身元引受人として施設入所時の費用負担や契約の締結に関与する場合、後見人が身元引受人として自分自身の責任を軽減するために、被後見人に不利な決定をする可能性があります。このような状況では、後見人の義務である被後見人の最善の利益を守るという責務が果たされない危険性があります。

3. 利益相反の具体例

 利益相反の具体例として、以下のようなケースが考えられます。

 施設入所の契約締結: 身元引受人として施設入所の契約を締結する際、後見人が被後見人の財産から費用を支払うことを決定するが、実際には施設の費用が高額で、被後見人の財産が減少する結果になる場合があります。後見人としては、被後見人の利益を最優先に考え、費用対効果を十分に検討すべきですが、身元引受人としての立場があると、契約を急ぐあまり、被後見人の利益を損なう決定を下す可能性があります。

 医療・介護の意思決定: 医療や介護に関する重要な意思決定が必要な場合、身元引受人としての責任と後見人としての財産管理の責任が衝突することがあります。例えば、身元引受人として長期入院を選択することが被後見人の財産に大きな影響を与える場合、後見人としては費用負担を軽減するために別の選択肢を探すべきかもしれません。しかし、身元引受人としての立場が強調されると、後見人としての判断が歪められるリスクがあります。

4. 法的見解と対策

 日本の法制度では、後見人と身元引受人が同一人物であること自体は禁止されていません。しかし、利益相反のリスクが高い場合には、第三者機関や家庭裁判所の関与が求められることがあります。また、後見監督人(監督者)を設置することで、利益相反が発生しないように監視する仕組みを導入することが有効です。

 さらに、後見人と身元引受人が同一人物である場合には、定期的に状況を見直し、必要に応じて役割を分離するか、監督機関に報告することで利益相反を回避する努力が必要です。家庭裁判所は、被後見人の利益を保護するために後見人の行動を監視し、必要に応じて指導や変更を行う権限を持っています。

5. 結論

 後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反のリスクが存在するため、被後見人の利益を最優先に考えるべきです。法的には同一人物が両方の役割を担うことは可能ですが、利益相反が発生しないようにするための対策が必要です。後見監督人の設置や家庭裁判所の関与、定期的な見直しなどを通じて、被後見人の利益が適切に保護されるような仕組みを整えることが重要です。

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