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(論点)不動産を共有で所有することの不利益

2024年07月19日

今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。共有不動産は、様々な問題を抱えています。元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。

目次

1. 意思決定の難航

2. 維持費用の負担と分担

3. 利用方法の衝突

4. 相続時の問題

5. 不動産の売却の困難

結論


1. 意思決定の難航

 不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。

 例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。

2. 維持費用の負担と分担

 不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。

 例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。

3. 利用方法の衝突

 共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。

 例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。

4. 相続時の問題

 共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。

 例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。

※通常は遺産分割協議により、相続人のどなたか一人に移転しますが、争っている場合、法定相続分での登記がなされてしまい、共有状態になります。 

5. 不動産の売却の困難

 共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。

 例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。

結論

 不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。

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