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配偶者居住権について

2023年05月29日

2020年4月1日の民法改正により、配偶者を保護する権利として新設された規定となります。施行から数年がたっており、遺言書の相談の際も「配偶者居住権」を盛り込んでほしいといった要望を受けるようになりました。配偶者居住権とはどのようなものなのでしょうか。解説していきます。

目次

1.配偶者居住権の意義

2.配偶者居住権の成立要件

3.配偶者居住権の存続期間

4.配偶者居住権の登記請求権・第三者対抗要件

5.配偶者居住権の配偶者による使用・収益

6.配偶者居住権の居住用建物の修繕等

7.配偶者居住権の費用負担

8.配偶者居住権の遺言書・登記の対象の違い

9.まとめ


1.配偶者居住権の意義

 配偶者居住権とは、配偶者の一方が死亡した場合に、他方の配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人の居住建物について、終身又は一定期間、無償で使用することができる法定権利のことです。

2.配偶者居住権の成立要件

 ①被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していること

  ※被相続人が相続開始時に居住建物を第三者と共有していた場合は、配偶者居住権は成立しません。(民法1028条第1項但書)

  ※居住建物が配偶者の財産に属していたとしても、他の者がその共有持分を有する場合、配偶者居住権は消滅しません。(民法1028条第2項)

 ➁遺産分割、遺贈・死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかにより取得すること。

 ※相続による取得が含まれないのは、相続により所有権を配偶者が取得しているためです。

3.配偶者居住権の存続期間

「(民法1030条)

 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。」

 原則:配偶者の終身の間

 例外:別段の定めをした時は、その定めによる

4.配偶者居住権の登記請求権・第三者対抗要件

 居住用建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。また、登記をすることにより、居住建物を取得したものその他第三者に対抗することができます。

 

5.配偶者居住権の配偶者による使用・収益

「(民法1032条)

 1.配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。

 2.配偶者居住権は、譲渡することができない

 3.配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない

 4.配偶者が第1項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。」

 つまり、配偶者には、善管注意義務が課され、所有者ではないので譲渡が禁止されますが、使用・収益(介護施設に入所している間誰かに貸して収益を得ること)は認められているということです。

6.配偶者居住権の居住用建物の修繕等

 居住している建物の修繕に関しては、配偶者自身は当然することができます。それでは、所有者である他の相続人は、どうなるのでしょうか?

 配偶者に相当期間定めて修繕を依頼し、期間内に修繕をしない場合に、居住建物の所有者が、修繕をすることができます。(民法1033条)

7.配偶者居住権の費用負担

 こちらは使用貸借の規定が準用されていますので、

 通常の必要費:配偶者が負担することとなります。

 特別の必要費・有益費:居住用の所有者が負担することになります。

※通常の必要費の範囲は、通常の使用に伴って生じる修繕費用などのほか、建物の固定資産税も含まれるとされていますので、それらの費用については配偶者が負担することになります。

8.配偶者居住権の遺言書・登記の対象の違い

 ①公正証書遺言で配偶者居住権を記載する場合の財産価額の計算について

 「手数料算定における配偶者居住権の評価

公正証書遺言の手数料の算定に当たっては、配偶者居住権は、居住建物およびその敷地(または敷地利用権。以下同じ。)の合計評価額の3割に相当する額を配偶者居住権の価額として、手数料の計算を行います。他方、居住建物およびその敷地を取得する者については、居住建物およびその敷地の合計評価額の7割に相当する額をその取得価額として、手数料の計算を行うことになります。詳しくは、公証人にお尋ねください。」

(日本公証人連合会HP抜粋)

 つまり、建物とその敷地の価額の3割が配偶者居住権の価額として手数料の計算を行うこととなります。

 ➁配偶者居住権の登記について

 「        登 記 申 請 書

  登記の目的 配偶者居住権設定

  原 因 令和2年6月1日遺産分割

  存続期間 令和2年5月15日から配偶者居住権者の死亡時まで

  特 約 第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができる

  権 利 者 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地

   法 務 花 子

  義 務 者 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地

   法 務 一 郎

添付情報

登記識別情報 登記原因証明情報 印鑑証明書 代理権限証明情報

登記識別情報を提供することができない理由

□不通知 □失効 □失念 □管理支障 □取引円滑障害 □その他( )

□登記識別情報の通知を希望しません。

令和2年6月10日申請 〇〇 法 務 局(又は地方法務局)〇〇支局(又は出張所)

代理人 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地

登 記 五 郎 印

連絡先の電話番号 00-0000-0000

課税価格 金3,000,000円

登録免許税 金6,000円

不動産の表示

不動産番号 1234567890123

所 在 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地

家屋番号 〇番

種 類 居宅

構 造 木造かわらぶき2階建

床 面 積 1階 43・00平方メートル

2階 21・34平方メートル

(法務省HP抜粋 配偶者居住権登記申請書))

登記をする対象は、土地・建物ではなく、建物のみにすることになります。

9.まとめ

 配偶者居住権の活用について、1次相続で所有権を配偶者が相続してしまった場合、配偶者が亡くなったときの2次相続で、また相続の登記が必要となりますが、1次相続時に所有権は長男名義に、そして、配偶者居住権の設定をすることで、建物については1度の相続登記で済みます。

 遺言書で記載する場合の財産価額の計算には土地と建物双方の価額を考慮することになりますが、登記は建物のみの設定になるので注意が必要です。

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