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認知症発症の高齢者・未成年者への相続財産承継について

2023年05月02日

民法上意思能力がない方が相続人にいる場合、遺産分割協議に参加して取りまとめても、その協議は「無効」となってしまいます。どうすれば、民法上意思能力のない方に相続財産を承継させることができるのでしょう。

目的

1.民法上の意思能力ない方の法律行為

2.相続で未成年者や成年被後見人がいた場合

 2-1.成年被後見人の場合

 2-2.未成年者の場合

3.未成年者・成年被後見人が相続人にいる場合の策


1.民法上の意思能力ない方の法律行為

 民法上の意思能力があると認められた場合、その人は契約を締結することができます。一方で、意思能力が不十分な場合には、その方が行った法律行為は「無効」となります。この場合、法定代理人が必要となります。例えば、未成年者の親等や成年後見人が任命された場合、その人の法定代理人が契約を締結することになります

2.相続で未成年者や成年被後見人がいた場合

 民法上意思能力がないため、法定代理人を介さない限り法律行為は無効となります。相続後に実施される遺産分割協議も法律行為となりますのでできません。

 それではどうすればいいのか、検討してみます。

 2-1.成年被後見人の場合

  成年後見人を家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要性があります。そして、この成年後見人は一度選任された場合、成年被後見人が亡くなるまで法定代理人として継続して就任するため、月2万~6万円の費用が発生することとなります。

 2-2.未成年者の場合

  未成年者の場合には、その親が法定代理人となることができます。

  しかし、相続人の中に親が含まれている場合には、同じ遺産分割協議内では「利益相反行為」となり、親は法定代理人として未成年者に代わって法律行為をすることはできません。この場合には、「特別代理人の選任」が必要となります。今回の遺産分割の協議のためだけ、未成年者に代わり法律行為をする意思能力者を選ぶこととなります。

※特別代理人とは、ある特定の契約や業務について、代理人として委託を受けた人のことを指します。つまり、一定の目的のために限定された範囲で代理人としての権限を持つ人を指します。

 特別代理人は、代理人としての権限が一般的な代理人と比べて狭く限定的であるため、その業務範囲内での行為しか行うことができません。一方で、その業務範囲内では代理人としての権限が大きく、主体である委託者に代わって契約を締結することもできます。

 例えば、ある不動産の売買契約を締結するために、売主が不在である場合には、特別代理人を立てて代理人として契約を締結することができます。また、病気や怪我などで自分自身で契約を締結できない場合にも、特別代理人を立てることができます。

 特別代理人は、業務が終了したり、契約が成立したりすると、その代理権は消滅します。したがって、一度限りの契約や業務に対して、一時的に代理人として契約を行う場合に適しています。

 つまり、成年後見人のように継続して就任することはなく、今回の遺産分割協議のみの就任となります。

3.未成年者・成年被後見人が相続人にいる場合の策

 生前に元気なうちに遺言書を作成しておくことが重要です。元気なうちにと書いたのは、あまりにもご高齢になってからだと、手続きが面倒になってくる傾向があるためです。

(これは、すでに相談業務で感じた私見ですが、ご高齢の方に多く見られる傾向でした。)

 日本人の平均寿命からすると、男性81.47歳、女性87.57歳(2021年厚生労働省)です。まだまだ大丈夫なんじゃないのと思われるかもしれません。

 しかし、ご高齢者になると、司法書士や公証役場に出向くことは、それなりに負担が大きいのです。元気なうちに遺言書の作成をする必要性があるのです。

 支障なく日常生活ができるとされる健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳(2019年厚生労働省)です。意外と短いということがわかります。

※健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」(厚生労働省)

 そして、遺言書を予め作成しておけば、遺言書の内容に法律上の問題がなければ、遺言書に記載した内容で相続財産は分割され相続人に帰属します。

 遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」などがあります。自筆証書遺言で法務局保管を選択した場合や、公正証書遺言で公証役場に出向く場合などは、それなりに体力が必要です。早めの遺言書作成のご検討をお勧めいたします。

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