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遺言書で検認手続きを要するのは、自筆証書遺言です。公正証書遺言では、検認の手続きは必要ありません。そして、検認の手続きについて、家庭裁判所に申し立て、その後手続きをすることになるのですが、見なかったことにしたり、この検認手続きをしないとどうなるのか?お話をしたいと思います。
目次
1.自筆証書遺言の検認手続き
2.自筆証書遺言でも検認の手続きを要しない場合とは
3.見なかったことにしたり、検認手続きを怠ると
4.まとめ
1.自筆証書遺言の検認手続き
検認とは、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
遺言書の検認手続きは、次のような流れで行われます。
①遺言書を見つけ、種類を特定する
➁相続人を明確にする(戸籍等をそろえる)
③家庭裁判所の管轄を確認する
(被相続人(遺言作成者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。)
④家庭裁判所に提出する書類を作成する
➄家庭裁判所に検認を申し立てる
⑥家庭裁判所から検認期日について通知が届く
⑦当日、家庭裁判所での検認に出席する
※相続人全員に通知されるので、相続人全員の立会が必要なのかという疑問について
「Q1. 相続人には,検認手続が行われることをだれが連絡するのですか。また,相続人のなかには,高齢で出頭できない人がいるのですが,問題ありませんか。
A. 相続人には,申立後,裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは,各人の判断に任されており,全員がそろわなくても検認手続は行われます。」(裁判所パンフレット引用)
⑧遺言書の返還を受け、検認済証明書を申請する
2.自筆証書遺言でも検認の手続きを要しない場合とは
自筆証書遺言でも、検認の手続きを省略することができます。それは、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合です。すでに、法務局担当官が、自筆証書遺言の形式の確認をして、本人確認後、原本とそのデータを保管するため、偽造変造の恐れがないためです。
(法務局パンフレット引用)
「相続をめぐる紛争を防止する観点から,本制度では,
①自筆証書遺言に係る遺言書を法務局(遺言書保管所)でお預かりし,その原本及びデータを長期間適正に管理します(原本:遺言者死亡後 50 年間/画像データ:遺言者死亡後 150 年間)。
②保管の際は,法務局職員(遺言書保管官)が民法の定める自筆証書遺言の方式について外形的な確認(全文, 日付及び氏名の自書,押印の有無等)を行います。※遺言の内容について,法務局職員(遺言書保管官)が相談に応じることはできません。※本制度は,保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
③相続開始後は,相続人等に遺言書の内容が確実に伝わるよう,証明書の交付や遺言書の閲覧等に対応します。
④本制度で保管されている遺言書は,家庭裁判所の検認が不要となります。
⑤相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けたり,遺言書の閲覧をした場合には,その他の全ての相続人等へ遺言書が保管されている旨の通知をします。」(引用終わり)
3.見なかったことにしたり、検認手続きを怠ると
遺言書を検認しないと、次のような問題が生じる可能性があります。
①5万円以下の過料が科せられる
➁相続人の欠格事由になる
③相続放棄や限定承認の期限が過ぎてしまう可能性がある
④相続手続きが遅れてしまう
➄相続人同士のトラブル
⑥相続財産の名義変更ができなくなる
この中で、特に重要なのが、遺言書を見つけて、他の相続人には黙って、遺産分割協議をした場合、➁の相続人の欠格事由となるケースがあります。欠格事由に該当すると、相続人としての権利をはく奪されますし、場合によっては刑事罰を受けることにもなりかねません。必ず、ご自身だけで判断せずに、相続人全員に相談して対応を検討してください。
遺言書がある場合でも、遺産分割協議で、相続人全員が合意をした場合には、遺産分割協議が有効に成立する場合もあります。詳しいことは専門家にご相談ください。
4.まとめ
自筆証書遺言の検認手続きについて解説をしてまいりました。一般的な手続きは、上記のような内容となっております。遺言書がない場合、相続人の中で、海外在住の方がいる場合や音信不通の方がいる場合など、現実的に遺産分割強をすることが困難になることがありますので、生前に遺言書を作成しておくことは重要だと考えております。
また、セミナーや相談会で、必ず出てくる質問で「遺産分割協議をしたのに、何年もたってから仏壇から遺言書が出てきたけど、どうしたらいいですか?」というものがあります。見なかったことにして放置したり、検認手続きを怠った場合のリスクも存在しますので、このような事案が発生した場合、専門家に相談することをお勧めいたします。
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