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根抵当権の債務者に相続発生

2023年07月28日

根抵当権(ねていとうけん)の債務者として登録されている方が亡くなった場合、相続開始後6か月以内に相続の登記を経て合意の登記をしなければ、相続発生後6か月経過で、根抵当権の元本が確定してしまいます。特に、ご商売をされていた方の相続で、このようなケースを見かけます。抵当権と根抵当権の違いや、元本確定って何?と思われた方、必見です。

目次

1.根抵当権とは

2.根抵当権の元本確定とは

3.抵当権との違い

4.債務者相続発生後6か月以内にする登記

5.根抵当権で債務者が複数いる場合

6.まとめ


1.根抵当権とは

 根抵当権とは、一定の範囲内の不特定の債権を極度額の範囲内において担保するために不動産上に設定された担保物権のことである。これに対し、通常の抵当権は特定の債権を被担保債権とする。 根抵当権は特定の債権を担保するものではないため付従性がなく、継続的な取引関係にある当事者間に生じる債権を担保することに向いている。(ウィキペディア)

 イメージとしては、カードローンで限度額が設定してあり、その範囲で借りたり返したりしても、カードローンの限度額を超えなければ存続し続けます。

2.根抵当権の元本確定とは

 一定の事由が発生したときは、連帯保証人の責任は、その時点で発生している借主の債務の額で確定し、それ以上の貸し付けに対し、根抵当権が設定されている当該不動産の担保責任を負わないというものです。

 一定の事由が発生すると元本が確定するとありますが、どのようなときに元本は確定するのでしょうか?

 ①あらかじめ定めていた元本確定期日(登記が必要)の到来

 ➁債務者などの相続発生

 ③債務者の破産手続き開始 など

などが挙げられます。(全部で15種類ありますが、今回は相続に焦点を当てたいので、3つとしています。)

 根抵当権者が登記簿から確認できるのは①③です。しかし、債務者に相続が発生したことまでは、なかなかわかりません。そうして、6か月の期間が経過すると、元本は確定してしまい、それ以後の貸し付けについては、当該根抵当権で設定不動産による担保ができなくなってしまうわけです。

3.抵当権との違い

 抵当権は、上記のように付従性があります。付従性とは、担保物権(抵当権など)が債権に付従する関係にあること。つまり、債権が成立しなければ担保物権も成立せず、また、債務者が債務を履行したことにより債務が消滅すれば、抵当権・質権などの担保物権も消滅するという性質を指しています。

 つまり、抵当権は初めの金銭消費貸借契約で発生した債権のみを当該不動産対象とする抵当権で担保できるわけです。根抵当権のように発生消滅を繰り返す債権は、抵当権で担保することができません。

4.債務者相続発生後6か月以内にする登記

 根抵当権の債務者に相続が発生し、相続開始後6か月経過で元本が確定することはすでに述べましたが、元本を確定させず債務者の相続人が継続して当該根抵当権の債務者として金融機関との融資を受ける場合にする手続きとなります。

 ①債務者の相続登記

  登記の目的 :〇番根抵当権変更

  原   因 :年月日相続

  変更後の事項:債務者(被相続人 A)

         B C ※B、CはAの相続人

 元本確定前の根抵当権は、債務者の相続登記をするだけではダメです。以下の「合意の登記」をすることで、指定債務者を確定することができます。※指定債務者とは、被相続人の取引を引き継ぐ相続人のことです。

 ➁指定債務者合意の登記

  登記の目的 :〇番根抵当権変更

  原   因 :年月日合意

  指定債務者 :B ※相続人B,Cのうち、Bが当該根抵当権の取引の債務者を引き継ぐ合意をしたということがわかります。

 しかし、まだこれだけでは足りないんです。難しいですよね。根抵当権の元本を確定していない状態では、相続発生後から合意の登記までにに根抵当権者が、B,C双方に融資をしていた場合、単純にBの合意の登記を入れてしまった場合、Cの債務は当該根抵当権で担保されなくなってしまいます。ですので、「債権の範囲」を変更し、Cの債務も担保するように変更登記を要することになります。

 さらに、Bが相続発生前から根抵当権者から受けていた融資の債務も担保したい場合にも、「債権の範囲」の変更登記が必要です。

※この辺りは、非常に難解な部分ですので、該当するケースの相続の場合には、必ず専門家に相談するようにしてください。

5.根抵当権で債務者が複数いる場合

 根抵当権の債務者が複数いる場合、この根抵当権を共用根抵当権と呼びます。この共用根抵当権の場合、今まで述べてきた理屈とは少し異なります。共用根抵当権の債務者の一人に相続が発生した場合を考えてみましょう。

 事例:根抵当権(債務者X Y)で、Xに相続が発生しました。根抵当権者である金融機関が気付いたときには、すでに相続から6か月が経過していました。この根抵当権の元本は確定するのでしょうか?

 結論から言いますと、全体として元本は確定しません。しかし、もはやXの合意の登記もできない状態になっています。さて、どうすれば丸く収まるのでしょうか?

 ①Xの相続人に、すでに発生している債務を支払ってもらい、債務者をYのみとする変更登記をする。※もともとXに債務が発生していなければ、債務者Yのみの変更登記で対応できます。

 ➁Xに債務が発生している場合には、この債務も当該根抵当権で担保できるように、「債権の範囲」の変更をする。※残ったYとの調整が必要です。

6.まとめ

 根抵当権は複雑です。その仕組み上、相続が発生した場合や、債務者を変更する場合には、細心の注意を要します。

 先日、とある金融機関の方から、根抵当権の債務者の変更登記の依頼を受けました。すでに、相続開始6か月経過しており、債務者には亡くなられた法人代表者の名前と法人がなっていました。債務者を法人のみにする変更だったのですが、亡くなられた法人代表の債務について確認するようにアドバイスしましたところ、債務は全くないとのことでしたので、変更登記のみで対応できることを説明しました。

 受験時代にはとても悩まされた根抵当権ですが、仕組みがわかればその対応策もわかるわけで、今では当時の学習が非常に役に立っています。もちろん、ご相談を受けた際には、その後の先例などを確認して、解説するようにしております。

 アイリスでは、相続無料相談を実施しております。このような複雑なものも受けておりますので、是非ご活用ください。

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