平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

任意後見契約と家族信託契約の違いについて

2023年09月25日

認知症対策として、「任意後見契約」と「家族信託契約」があります。先の家族信託万能論の罠でも解説している通り、同じ「財産管理」であっても、その内容は大きく異なります。こんな筈ではなかったとならないために、比較解説していきます。

目次

1.はじめに

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

3.結局どちらの制度がいいのか?

4.まとめ


1.はじめに

 認知症対策として「任意後見制度」と「家族信託」という2つの制度があります。「どちらの制度がいいの?」、認知症対策相談の時、相談者様からよく質問を受けます。どちらの制度も一長一短があります。制度の内容を要理解せずに、表面的なメリットのみとらえて選択してしまうと、「こんなはずではなかった。」ということにもなりかねません。内容をよく理解した上で選択することが重要になります。なぜなら、この2つの制度は、性質が異なるものだからです。ご家族の置かれた状況からどちらの制度を選択すればよいか見えてくると思います。それでは解説してまいります。

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

 (事例)母は既に亡くなっており、父親が最近少し物忘れが多くなってきており、長男夫婦と次男夫婦がいる事例で見ていきます。

このような事例で、長男が「財産管理」をしていきたい場合を考えていきます。

 ※父親に判断能力がまだあることが前提条件となります。すでに判断能力を失われている場合には、法定の成年後見制度を利用することになります。

 ※2つの制度共に詐欺被害などにあった場合の「取消権」がないので対応はできません。法定の成年後見制度にはありますので、ここでも選択の判断が分かれます。

3.結局どちらの制度がいいのか?

 事例から見ますと、父親に「身上監護まで必要」であるなら任意後見制度を利用し、必要なければ「家族信託」という選択になります。

 しかし、家族信託のみで対応していたがために、父親の認知症が進み、要介護認定の申請手続きや、介護施設への入所契約など発生した場合、「法定の成年後見制度」を利用しなければならなくなります。

 そこで、大きな財産については「家族信託」で財産管理をして、それ以外の財産と身上監護を「任意後見制度」を併用する方法もあります。

 また、併用だとコスト面で大きくなるのであれば、どちらがいいのかの選択が必要となってきます。この場合は、ご家族でよく話し合ったうえで決めていただきます。

4.まとめ

 ①積極的な財産管理を行いたいのであれば「家族信託」

 ➁身上監護が必要なら「任意後見」

 ③裁判所の関与を避けたいのであれば、「家族信託」

 ④どちらの制度もご要望になじむのであれば、費用で比較する

 「任意後見制度」も「家族信託」もどちらかを選択すれば完ぺきといった制度ではありません。それぞれの制度の趣旨が異なるためです。どちらもご要望に馴染まない場合がありますので、制度をよく理解して決めなければなりません。専門家と相談しながら進めていくのがいいと思います。

最新のブログ記事

土地の合筆や分筆を行った際の登記識別情報(いわゆる「権利証」)の取り扱いについて、詳しく説明します。土地を処分する際に、売主は、権利証又は登記識別情報を用意しなければなりません。合筆・分筆がなされた土地の場合、どのタイミングのものが必要になるのでしょうか?

土地の合筆・分筆は、不動産管理や相続対策など、さまざまな状況で利用される重要な手続きです。これらの手続きは、土地の形状や利用目的に応じて、複数の土地をまとめたり、ひとつの土地を分けたりするものです。ここでは、合筆と分筆について詳しく解説し、それぞれのメリットや手続きの流れ、注意点について説明します。

相続の際、法定相続分に従って財産が分配されるのが一般的ですが、相続人の中には、被相続人(亡くなった方)の財産形成や維持、または療養看護に特別な貢献をした者がいることがあります。このような場合、その貢献に応じて相続分が増額されることがあります。これを「寄与分」と言います。また、相続人ではない親族が特別な貢献をした場合、相続人から特別な報酬を請求できる「特別寄与料」という制度も存在します。本稿では、寄与分と特別寄与料についての解説と、それらが認められるための要件について詳述します。