平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の過料の要件)

2023年11月06日

2024年4月1日より始まる相続登記義務化について、法務省よりその過料の運用方針が示されました。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」について解説します。

目次

1.相続登記義務化の概要

2.相続登記義務化による過料の要件

3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン

4.①過料通知およびこれに先立つ催告

5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

6.③「正当な理由」があると認められる場合

7.まとめ


1.相続登記義務化の概要

 2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。

2.相続登記義務化による過料の要件

 相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。

 ①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」

 ➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」

 ※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。

 正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。

3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン

 2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。

 相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。

 ①過料通知およびこれに先立つ催告

 ➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

 ③「正当な理由」があると認められる場合

が定められています。

4.①過料通知およびこれに先立つ催告

 相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。

 しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。

5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

 登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。

 ➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき

 ➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき

 ※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。

6.③「正当な理由」があると認められる場合

 ③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

 ③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合

 ③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

 ③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

 ③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

 ※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。

7.まとめ

 相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。

 これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。

 登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。

 相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。

 詳しくは司法書士までご相談ください。

 アイリスでは、無料相談を随時受け付けております。まずは、ご予約をお願いいたします。

最新のブログ記事

人生の終わりに向けて、財産の相続や処理について考えることは非常に重要です。特に独り身であり、相続人が限られている場合、適切な準備をしなければ、遺産が放置されたり、家族に不必要な負担をかける可能性があります。本記事では、独り身で親が他界し、相続人が弟のみでその弟も相続を放棄するといった状況において、どのように財産が処理されるのか、そして必要な手続きについて解説します。遺言書を作成する意義や、相続人がいない場合の財産処理の流れについても詳述します。

離婚後に親が相続対策を進める際、過去に別れた配偶者との間にできた子供に財産を贈与しようとするケースや、生命保険の受取人としてその子供を指定する場合があります。しかし、このような提案に対して、子供が財産を受け取ることを拒否する場面も少なくありません。なぜなら、単純に親からの財産を受け取ることが利益にならない、もしくは心理的・実務的な理由で負担となることがあるからです。本稿では、そうした背景を具体的に解説し、子供が財産を受け取ることを躊躇する主要な理由を考察していきます。

相続対策の一環として、財産を減らす方法や、養子縁組を活用して法定相続人の数を増やすことが一般的に行われます。しかし、法律上と税務上では異なる基準が存在し、それらを理解せずに対策を講じると、思わぬ結果になることも少なくありません。本記事では、養子縁組による法定相続人の増加と財産を減らす方法に焦点を当て、相続対策を進める際に気を付けるべき法的・税務的側面を解説します。