平日9時~18時 土10時~15時 時間外対応可能

令和6年4月1日相続登記義務化(相続人に行方不明者がいる場合)

2024年01月11日

今までに何度か相続人が音信不通となっているケースがありました。音信不通と言っても、住所や居住場所が特定されている場合には、何とか連絡をする方法はあるのですが、中には戸籍などからは追えず、他の相続人も今まで何の連絡もないと話している場合には、どのように遺産分割協議を進めていけばよいのでしょうか。

目次

1.遺産分割協議を成立する要件

2.住所・連絡先が分からない場合

3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)

4.完全に行方不明の場合

5.まとめ


1.遺産分割協議を成立する要件

 相続財産の分配方法を決めるためには遺産分割協議が必要です。この遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければならず、誰か一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。相続登記においても法定相続人全員が記名し実印にて捺印した遺産分割協議書と印鑑証明書の添付が必要となります。

 つまり「相続人全員」でなければ、遺産分割協議は無効となります。ですが、行方不明など連絡がつかなかったり所在がわからない場合にはどうすればいいのでしょうか。

2.住所・連絡先が分からない場合

 疎遠になった相続人の住所を調べる方法として、戸籍の附票を確認することで確認できる場合があります。ただし、本籍地で取得ができますので、調査が必要となるかもしれません。相続人の調査として、弁護士、司法書士、行政書士にお願いすると、「職務上請求」をすることにより調査が可能です。勿論、調査を要する他の相続人の方でも窓口で取得することができます。

 所在が明らかとなっても、その方が応じてくれるかどうかはわかりません。

3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)

 何かしらの理由で連絡しても応答してもらえない、または話し合いを拒否されてしまう場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという手段があります。調停を申し立てると家庭裁判所から呼び出し状が送達されるので、家庭裁判所で話し合いを行い、遺産分割を成立させることになります。

 しかし、いきなり家庭裁判所に調停を申し立てると、「なぜ返信しないのか」「なぜ拒否するのか」といったことが、法廷での話し合いの場で明らかになるので、話し合いがこじれるかもしれません。このケースではトラブルに発展する場合が多いので、自身でもしくは代理人として依頼した弁護士に内容証明郵便で、調停の手続きに入る前に解決できるかどうか探ってみた方がいいと思います。

4.住居すらわからない行方不明の場合

戸籍の附票などに記載された住所には存在せず、どこで暮らしているかも分からず、連絡手段もない状態になってしまっている場合、遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があるので、相続人の中に不在者がいる場合にはこれを行うことができません。

この場合には、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることで、その管理人を含めて遺産分割協議をすることができます。不在者財産管理人の申立ては、利害関係人または検察官が家庭裁判所に対して行いますが、相続人の一部が不在者の場合には他の相続人が利害関係人に該当するのでこの申立てを行うことができます。

家庭裁判所が介在するので、仮に行方不明者をないがしろにしたような遺産分割協議の場合、家庭裁判所が許可を出さない可能性もありますので、注意が必要です。

また、失踪宣告を活用する場合もあります。失踪宣告とは、不在者についてその生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。

5.まとめ

 このように、行方不明でもその状況次第で対応する手法が変わってきます。

 連絡が着く状態であれば、できる限り穏便に話を進めることを心掛けてください。

 また、どの状況にあるのかわからない場合には、専門家に相談をすることをお勧めいたします。どのような資料を取得して調査するのか、相続専門の専門家なら答えを持っているはずです。そしてその後の対応についてもアドバイスをしていただけると思います。

 アイリスでは、税理士も含めた形での「相続法律・税務無料相談会」を定期的に開催しております。すでに紛争に発展している場合には、専門の弁護士にお繋ぎすることも可能です。

最新のブログ記事

土地の合筆や分筆を行った際の登記識別情報(いわゆる「権利証」)の取り扱いについて、詳しく説明します。土地を処分する際に、売主は、権利証又は登記識別情報を用意しなければなりません。合筆・分筆がなされた土地の場合、どのタイミングのものが必要になるのでしょうか?

土地の合筆・分筆は、不動産管理や相続対策など、さまざまな状況で利用される重要な手続きです。これらの手続きは、土地の形状や利用目的に応じて、複数の土地をまとめたり、ひとつの土地を分けたりするものです。ここでは、合筆と分筆について詳しく解説し、それぞれのメリットや手続きの流れ、注意点について説明します。

相続の際、法定相続分に従って財産が分配されるのが一般的ですが、相続人の中には、被相続人(亡くなった方)の財産形成や維持、または療養看護に特別な貢献をした者がいることがあります。このような場合、その貢献に応じて相続分が増額されることがあります。これを「寄与分」と言います。また、相続人ではない親族が特別な貢献をした場合、相続人から特別な報酬を請求できる「特別寄与料」という制度も存在します。本稿では、寄与分と特別寄与料についての解説と、それらが認められるための要件について詳述します。