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【第4回】どの方式を選ぶ?自筆証書遺言と公正証書遺言、それぞれの特徴と落とし穴 

2025年07月03日

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの方式があります。どちらを選べば良いか悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、それぞれの作成方法・メリット・デメリット・注意点を比較し、自分に合った遺言の形式を選ぶための判断材料を提供します。

📚目次

  1. はじめに──遺言書の方式を選ぶ重要性
  2. 自筆証書遺言とは?特徴と作成方法
  3. 自筆証書遺言のメリットとデメリット
  4. 公正証書遺言とは?特徴と作成手順
  5. 公正証書遺言のメリットとデメリット
  6. それぞれの「落とし穴」と注意点
  7. おわりに──"想い"を確実に届けるために

1. はじめに──遺言書の方式を選ぶ重要性

 せっかく遺言書を残しても、それが法的に無効だったり、内容に不備があったりすると、相続人にトラブルを残してしまうことになります。
 遺言書の形式には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、それぞれに向き不向きや注意点があります。

 遺言は「書いたら終わり」ではなく、「内容が有効で、家族にとって役に立つこと」が何より大切です。
 本記事では、それぞれの方式を比較しながら、自分にとって最適な遺言の形を考えていきましょう。

2. 自筆証書遺言とは?特徴と作成方法

 自筆証書遺言とは、全文・日付・氏名を自筆で書き、押印することで作成する最も手軽な遺言方式です。
 2020年からは「財産目録部分のみパソコン作成が可」「法務局での保管制度」も導入され、以前より使いやすくなりました。

基本の要件

  • 本文(遺言内容)はすべて自筆で記載
  • 日付も手書きで記載(例:「令和7年6月25日」)
  • 氏名を自署し、押印する(実印・認印どちらでも可)
  • 書式は自由だが、財産や受遺者が特定できるように

3. 自筆証書遺言のメリットとデメリット

🔷メリット

  • 手軽で費用がかからない(用紙とペンがあればOK)
  • 気持ちが変わったら何度でも書き直せる
  • 内容を他人に知られずに作成できる

🔶デメリット

  • 形式不備による無効リスクが高い(例:日付の記載漏れ)
  • 遺言者の死後、「家庭裁判所の検認」が必要
  • 保管場所が分からず発見されない可能性
  • 偽造・改ざん・破棄のリスク

※2020年以降は法務局に自筆証書遺言を預ける「遺言書保管制度」がスタートし、検認不要・紛失リスク回避が可能になりましたが、別途申請と手数料が必要です。

4. 公正証書遺言とは?特徴と作成手順

 公正証書遺言は、公証人(元裁判官・検察官など)が関与し、法律的に整った形で作成される遺言書です。
 原本は公証役場に保管され、遺言者が亡くなった後も内容が確実に確認できます。

作成手順

  1. 司法書士・弁護士など専門家に相談し、内容を検討
  2. 公証役場に予約し、必要書類を提出(戸籍謄本、不動産資料など)
  3. 証人2人の立ち会いのもと、公証人が遺言を作成・読み上げ
  4. 内容に問題がなければ、署名・押印して完成

5. 公正証書遺言のメリットとデメリット

🔷メリット

  • 法律的に無効になる心配がほとんどない
  • 家庭裁判所の検認手続きが不要
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない
  • 専門家が関与するため、内容に問題があればその場で修正可能

🔶デメリット

  • 作成に費用がかかる(数万円〜、財産額に応じて)
  • 公証人や証人に内容が知られる
  • ある程度の準備期間が必要(資料収集・打ち合わせなど)

6. それぞれの「落とし穴」と注意点

落とし穴1:内容の不備による「無効」

 特に自筆証書遺言では、**「日付の記載が曖昧」「財産の特定が不十分」**といった不備が多く、せっかく書いても無効となることがあります。

落とし穴2:保管場所が不明・紛失

 自宅の引き出しや仏壇の中に保管していたが、誰にも気づかれなかったというケースも。遺言の存在そのものが分からなければ、無効と同じです。

落とし穴3:遺留分に配慮していない

 どちらの方式でも、他の相続人の**遺留分(最低限の取り分)**を侵害する内容だと、後に争いの原因になります。
 内容に不安があれば、必ず専門家に相談するのが安心です。

7. おわりに──"想い"を確実に届けるために

 遺言書の形式は、自分の状況や目的によって適したものが異なります。
 「手軽さ」を優先するなら自筆証書遺言も有効ですが、法的な確実性や家族の手間を減らすという点では、公正証書遺言が安心です。

 どちらにせよ、最も大切なのは「残された家族が困らないように」という配慮。
 遺言書は、あなたの"想い"を形にする大切なツールです。信頼できる専門家と一緒に、納得のいく遺言書を作成しましょう。

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