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【第4回】資産の価値は目減りし、ローンは残る――バブル崩壊の傷痕

2025年07月03日

バブル期に高値で購入された不動産は、バブル崩壊後に大きく値を下げ、多くの家庭が「資産の目減り」と「借金の残債」というダブルパンチを受けました。この記事では、不動産資産の幻想が崩れた現実を見ていきます。

■ 目次

  1. 不動産価格の急騰と熱狂の時代
  2. バブル崩壊後の地価暴落
  3. 「資産」ではなく「負債」になった家
  4. 住宅ローン破綻と自己破産の増加
  5. 相続では引き取り手がない不動産へ

1. 不動産価格の急騰と熱狂の時代


 1980年代後半、日本は未曾有のバブル景気に沸きました。土地神話が信じられていた当時、都市部の地価は毎年のように高騰し、「不動産は持っていれば必ず値上がりする」「土地は資産」という意識が広く浸透しました。企業も個人も土地を担保に巨額の融資を受け、銀行もこぞって不動産関連の融資を拡大。マイホーム購入が社会的ステータスとされる中、多くの家庭が背伸びをしてでも住宅ローンを組み、不動産を手に入れました。

2. バブル崩壊後の地価暴落


 しかし1991年のバブル崩壊を境に状況は一変します。急激な金融引き締めにより不動産価格は暴落。わずか数年で、都心の一等地でさえ半値以下に、不便な郊外地では価格が10分の1近くまで落ち込むケースもありました。バブル期に高値で買った家は、すでに売ろうとしてもローン残高を下回る「オーバーローン状態」となり、実質的に売却不能な資産に変わりました。

3. 「資産」ではなく「負債」になった家


 不動産は本来、資産として後世に残せるものでした。しかし、バブル崩壊後はそうした幻想が崩れ、住宅は「負債」に転じました。たとえば3,000万円で購入した住宅が10年後には1,000万円の価値しかなく、ローンはまだ2,000万円以上残っている――そんな家庭が全国に多数存在しました。都市部から遠く、交通インフラも乏しい地域では、買い手が見つからず、家を持っていることがむしろ足かせとなる事例も増加しました。

4. 住宅ローン破綻と自己破産の増加


 返済能力を超えてローンを組んだ家庭では、返済が困難となり、やがてローン破綻・任意売却・競売・自己破産へと至るケースも続出しました。バブル期に家を買った団塊世代が中高年になるにつれ、収入の減少や退職といった要因も重なり、「人生最大の買い物」が「人生最大のリスク」へと転じたのです。

 こうした背景のもと、住宅ローンの組み方やライフプラン設計のあり方が社会全体で見直されるようになりましたが、その過渡期で犠牲となった世代がいたことも忘れてはなりません。

5. 相続では引き取り手がない不動産へ


 そして現在、こうした不動産を相続する世代が問題に直面しています。親の住んでいた家を相続したものの、「売れない・使えない・管理費がかかる」といった理由から、引き取りを拒否するケースが急増しています。特に地方や過疎地では、空き家として放置され、やがて倒壊の危険や近隣への悪影響を及ぼす「社会的負動産」へと変貌しています。

 近年では、相続放棄を選ぶ人も多くなり、結果として所有者不明土地や空き家の増加につながっています。これはバブル期の無理な不動産取得の"ツケ"が、今になって次世代へと回ってきている現実の表れです。

まとめ
 不動産はかつて「最も確実な資産」と信じられていました。しかし、バブル崩壊を機にその神話は崩れ、むしろ"負の遺産"となるケースも少なくありません。高値掴み、ローン残債、資産価値の目減り――そうした一連の流れは、相続世代にまで影響を与えています。第4回では、そうしたバブル崩壊の傷痕をたどりながら、現在の空き家・所有者不明土地問題の起点を探りました。次回は、これらの問題に対応する制度的アプローチについて解説していきます。

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